失語症がある人の老人ホーム選び

失語症がある人の老人ホーム選びでは、介護度や医療面だけでなく、本人がどの方法なら意思を伝えやすく、職員側がそれを受け止められるかを確認することが重要です。

失語症は、脳梗塞や脳出血などの後にみられることがあり、「話す」だけでなく「聞いて理解する」「読む」「書く」といった言語機能にも影響が出ることがあります。症状の出方は人によって異なるため、会話が難しいという一点だけで判断せず、本人に合ったコミュニケーション方法を共有できる施設を探す必要があります。

失語症がある人の施設選びで最も大切なこと
「話せるかどうか」ではなく、どの方法なら本人の意思を確認できるかを施設と共有し、その方法を日常の介護に使ってもらえるかを確認します。

失語症があっても老人ホームへ入居できる?

失語症があることだけを理由に、老人ホームへ入居できないと決まっているわけではありません。実際の受け入れ可否は、失語症の程度だけでなく、身体状況、認知機能、食事や移動の介助量、医療処置、行動面などを含めて施設ごとに判断されます。

重要なのは、入居前に「失語症があります」とだけ伝えるのではなく、本人が何を理解でき、どの方法なら返答しやすいのかを具体的に伝えることです。

確認ポイント
たとえば「短い質問なら理解しやすい」「はい・いいえで答えられる」「文字より絵や実物の方が伝わる」など、実際に使える方法を共有します。

失語症は人によって困り方が違う

失語症では、話す・聞く・読む・書くのすべてが同じ程度に難しくなるとは限りません。話すことが難しくても質問内容は理解できる人もいれば、言葉を聞いて理解することにも時間がかかる人もいます。

1
話す
言いたい言葉が出にくい、別の言葉になる、短い言葉しか出にくいなど。
2
聞いて理解する
長い説明や複雑な質問になると理解しづらいことがあります。
3
読む
文章の理解が難しい一方、単語や写真なら分かりやすい場合があります。
4
書く
文字を書くことが難しい場合もあれば、会話より筆談の方が伝えやすい場合もあります。

そのため、施設見学では「失語症への対応経験がありますか」だけでなく、本人の具体的なコミュニケーション方法に合わせられるかを確認します。

施設選びで確認したいコミュニケーション支援

急かさず待ってもらえるか

失語症では、返答までに時間がかかることがあります。職員が質問を重ねたり、本人の返答を待たずに家族へ答えを求めたりすると、本人の意思確認が難しくなります。

見学時には、職員が高齢者に話しかける速度や、返答を待つ姿勢も見ておきましょう。

短い言葉や一つずつの質問に対応できるか

一度に多くの内容を伝えるより、短い文で一つずつ確認した方が理解しやすいことがあります。「お風呂に行きますか、それとも部屋で休みますか」とまとめて聞くより、「お風呂に行きますか」と一つずつ聞くなどの工夫が考えられます。

写真・絵・指差し・実物を使えるか

言葉だけでのやり取りが難しい場合、写真、絵、コミュニケーションボード、実物を示す方法が役立つことがあります。厚生労働省も、失語症者への意思疎通支援では、理解や表現の補助として道具や絵を使う方法を例示しています。

本人の「はい・いいえ」を丁寧に確認できるか

発語が少ない人では、うなずき、首振り、指差し、表情などが重要な意思表示になります。ただし、質問が複雑だと回答が不正確になることもあるため、職員が確認方法を統一できるかが大切です。

失語症を認知症と取り違えないための確認も重要

失語症では、言葉が出ない、質問にすぐ答えられない、会話がかみ合いにくいことがあります。その様子だけを見ると、認知症と誤解されることがあります。

しかし、失語症は言語機能の障害であり、言葉でうまく表現できなくても、本人が状況を理解し考えている場合があります。入居前に、主治医や言語聴覚士などから得ている情報を施設へ渡し、本人の理解力と表現方法を分けて説明しておくことが大切です。

注意したい点

「返事が遅い」「言葉が出ない」という理由だけで、本人の意思を確認せず家族がすべて決める形にならないかを確認しましょう。

言語聴覚士やリハビリとの連携も確認する

失語症がある人では、言語聴覚士による評価や訓練を続けている場合があります。老人ホームに言語聴覚士が常勤しているとは限らないため、外部の訪問リハビリや医療機関への通院を継続できるか確認します。

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、外部サービスを利用する形になることがあります。介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームでも、リハビリ体制や外部医療との連携方法は施設ごとに異なります。

食事・服薬・痛みの訴えをどう確認するか

失語症がある人では、日常の介護場面で本人の訴えを拾えるかが重要です。とくに、食事、排泄、痛み、体調不良、服薬に関する意思確認が不十分だと、本人の不快感や体調変化に気づきにくくなることがあります。

入居前に施設へ伝えておきたいこと

本人が痛みをどう表現するか、トイレに行きたいときのサイン、食べたくないときの反応、薬を嫌がるときの様子など、家族が知っている具体的なサインをまとめておくと引き継ぎに役立ちます。

入居前に施設へ渡したい情報

1
失語症の原因と経過
脳梗塞、脳出血、外傷などの経過と現在の状態。
2
理解しやすい話し方
短い文、一問一答、ゆっくり話すなど。
3
本人が使いやすい表現方法
指差し、筆談、写真、ジェスチャー、コミュニケーションボードなど。
4
日常生活でよく使うサイン
トイレ、痛み、水分、休みたいときなどの表現。
5
現在のリハビリ内容
言語聴覚士の訓練、通院、訪問リハビリの利用状況。

見学時は本人と職員のやり取りも確認する

家族だけで見学すると、施設が本人とどう関わるかは分かりにくいものです。可能であれば本人も一緒に見学し、職員が本人へ直接話しかけるか、返事を待つか、伝わらないときに別の方法を試すかを確認します。

会話がうまく進まないときでも、本人を置き去りにせず、表情や反応を見ながら意思を確認してくれる施設かどうかは重要な判断材料です。

まとめ|失語症の程度ではなく「意思を伝えられる環境」で選ぶ

失語症がある人の老人ホーム選びでは、症状名だけで受け入れ可否を判断するのではなく、本人がどのような方法なら意思を伝えられるかを施設と共有することが大切です。

話す・聞く・読む・書くの得意不得意を整理し、職員が本人の返答を待ち、必要に応じて写真や指差しなどを使えるかを確認しましょう。あわせて、言語聴覚士や医療機関との連携、体調不良時の意思確認方法まで確認しておくと、入居後の生活を具体的にイメージしやすくなります。

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