特別養護老人ホーム(特養)へ申し込みたいと思っても、「市役所へ行けばいい?」「施設へ直接申し込む?」「何の書類をそろえればよい?」と手続きが分かりにくいことがあります。
特養の入所申込みは、全国で完全に同じ方法ではありません。希望する特養へ直接申し込む地域もあれば、自治体や地域の共通申込書を使う地域もあります。必要書類も、介護保険被保険者証の写し、現在の生活状況、担当ケアマネジャーの情報など、自治体・施設によって異なります。
そのため、最初に行うことは希望する特養または市区町村の介護保険担当窓口へ「この地域の申込方法・最新様式」を確認することです。
まず結論|特養は「希望施設の申込方法」を確認してから書類をそろえる
特養への申込みは、①候補施設を決める、②施設または市区町村へ申込先・様式を確認する、③入所申込書と必要書類を準備する、④本人の要介護度・在宅生活の困難さ・家族状況を具体的に伝える、⑤申込後の状況変化を施設へ連絡する、という流れが基本です。要介護1・2で特例入所を希望する場合は、なぜ自宅での生活が困難なのかを申込書へ具体的に記載します。申込みは「早い者勝ち」とは限らず、施設が入所の必要性を判断して優先順位を決めます。
特養の申込先はどこ?
特養の申込先は地域によって異なります。
希望する特養へ直接申し込む
施設へ入所申込書を提出する方式があります。複数施設を希望する場合、それぞれへ申込みが必要になる地域もあります。
自治体・地域の共通様式を使う
都道府県、市区町村、施設団体などが共通の入所申込書や入所指針を定めている地域があります。
市役所が入所先を決める制度ではない
通常の介護保険による特養入所では、市区町村へ申請すれば行政が自動的に施設を割り当てる仕組みではありません。入所の判断は施設が地域の入所指針等に沿って行います。
POINT
申込書をインターネットで見つけても、古い様式の場合があります。提出前に希望施設へ電話し、「現在使っている申込書はこれでよいですか」と確認してください。
最初に候補の特養を決める
申込みを始める前に、本人が実際に入所できる候補施設を絞ります。
通いやすい地域
家族の面会、通院、入院時の対応を考え、無理なく通える範囲を検討します。
医療対応
胃ろう、インスリン、吸引、酸素療法などが必要な場合は、申込み前に対応可能か確認します。
認知症ケア
外出リスク、夜間不穏、介護拒否などがある場合、施設の支援方針を聞きます。
居室タイプ
従来型・ユニット型、多床室・個室など、本人の希望と費用を確認します。
看取り
長期入所を考えるなら、将来看取りまで対応できるか確認します。
特養へ申し込む基本的な流れ
01
入所条件を確認する
原則要介護3以上か、要介護1・2なら特例入所の可能性があるかを確認します。
02
候補施設へ問い合わせる
申込先、最新の申込書、必要書類、提出方法を確認します。
03
必要書類をそろえる
本人情報、要介護度、生活状況、家族状況などが分かる資料を準備します。
04
申込書を提出する
窓口、郵送など施設が指定する方法で提出します。
05
状況変化を連絡する
要介護度、介護者、入院状況などが変わったら施設へ伝えます。
特養の申込みに必要な書類
必要書類は自治体・施設によって異なるため、提出先の最新案内を基準にしてください。
準備を求められやすい書類・情報
- 特別養護老人ホーム入所申込書
- 介護保険被保険者証の写し
- 介護保険負担割合証等の情報
- 要介護認定の内容
- 本人の現在の生活状況
- 家族・介護者の状況
- 担当ケアマネジャー・居宅介護支援事業所の情報
- 現在利用している介護サービスの内容
- 医療処置・持病・服薬等の情報
- 本人・家族の連絡先
地域によっては、ケアマネジャー等が作成する状況確認票、介護サービス利用票の写し、認定調査情報等を求める場合もあります。
申込書には何を書く?
特養の申込書では、本人の基本情報だけでなく「なぜ今、施設入所が必要なのか」を確認します。
本人の基本情報
氏名、生年月日、住所、要介護度、介護保険情報などを記載します。
現在の居場所
自宅、病院、老健、ショートステイなど、現在どこで生活しているかを記載します。
介護の状況
食事、排泄、入浴、移動、認知症症状など、日常生活で必要な支援を伝えます。
家族の状況
同居・別居、介護者の年齢、病気、仕事、育児など、介護を続けるうえでの事情を記載します。
医療の状況
持病、定期通院、医療処置、服薬などを伝えます。
要介護1・2で申し込む場合は「特例入所」の理由を書く
特養の新規入所は原則要介護3以上ですが、要介護1・2でも一定の場合に特例入所の対象になり得ます。
厚生労働省の入所指針では、要介護1・2の申込みについて、施設が申込書に特例入所の要件を具体的に記載し、申込者側の考えを記載してもらうこととしています。
認知症による生活上の困難
外出して帰れなくなる、意思疎通が難しい、昼夜を問わず見守りが必要など、具体的に記載します。
精神障害・知的障害等
生活へ大きな支障が出ている場合は、その状態を具体的に伝えます。
虐待・安全上の問題
家族等からの深刻な虐待が疑われるなど、安全な在宅生活が難しい事情を伝えます。
家族による支援が難しい
独居、老老介護、介護者の病気などにより支援が期待できず、地域サービスを利用しても在宅生活が難しい状況を説明します。
要介護1・2だから申込みを断られる?
要介護1・2であることだけを理由に、特例入所の申立てがある申込みを一律に受け付けない取扱いは適切ではありません。
厚生労働省は、要介護1・2の人について、特例入所の要件に該当している旨の申立てがある場合には、入所申込みを受け付けない取扱いは認めないことを示しています。
申込み=入所決定ではない
申込みを受け付けた後、特例入所の対象となるか、市区町村との情報共有等を含めて確認されます。
対象になっても順番待ちがある
特例入所の対象になったからといって、直ちに入所できるとは限りません。
ケアマネジャーに相談してから申し込むと進めやすい
自宅で介護サービスを利用している人は、担当ケアマネジャーへ相談すると手続きを整理しやすくなります。
本人の介護状況を把握している
現在の介護サービス利用状況、家族の負担、在宅生活の課題を整理できます。
候補施設を探す材料になる
本人の要介護度、認知症、医療ニーズ等に応じて地域の施設情報を得られる場合があります。
必要書類の確認を手伝ってもらえる場合がある
申込書の記載内容や添付資料について相談できます。
ただし、ケアマネジャーが本人に代わって入所を決定するわけではありません。最終的な申込みと施設選択は本人・家族等が施設と確認して進めます。
病院から特養へ申し込む場合
入院中に自宅復帰が難しくなり、退院後の特養入所を希望することもあります。
医療ソーシャルワーカー等へ相談する
病院の医療ソーシャルワーカー、退院支援担当者等へ、特養を希望していることを伝えます。
退院期限と入所待ちを分けて考える
特養は申込み後すぐ入所できるとは限りません。退院期限が迫っている場合は、老健、ショートステイ、有料老人ホーム等の一時的な選択肢も検討します。
病院の医療情報を施設へ共有する
入所が具体化した段階で、診療情報、看護情報、服薬、医療処置などを正確に引き継ぎます。
老健に入所中でも特養へ申し込める?
老健に入所している人でも、在宅復帰が難しく特養の条件を満たす場合は申込みを検討できます。
老健の相談員へ相談する
今後の生活場所について、支援相談員やケアマネジャー等と相談します。
特養の待機中に老健で生活する場合
老健は在宅復帰・在宅療養支援を目的とする施設であり、特養入所まで必ず無期限に滞在できるわけではありません。退所後の選択肢も並行して検討します。
複数の特養へ同時に申し込める?
複数施設への申込みができる地域はありますが、申込方式は自治体・地域によって異なります。
施設ごとに申込書が必要な場合
希望する特養へそれぞれ書類を提出します。
共通申込書がある場合
地域の共通様式を使い、希望施設を記載する方式などがあります。
申込済み施設を管理する
どこへいつ申し込んだか、連絡先、必要な更新手続きなどを一覧にしておくと管理しやすくなります。
申込みは先着順ではない
特養は、単純に「一番早く申し込んだ人から入る」とは限りません。
厚生労働省の基準では、申込者が空床数を上回る場合、介護の必要の程度や家族等の状況を勘案し、施設サービスを受ける必要性が高い人を優先的に入所させるよう努めることとされています。
要介護度
介護の必要性を判断する材料になります。
家族の介護力
独居、老老介護、介護者の病気等も重要な情報です。
居宅サービスの利用状況
在宅サービスを利用しても自宅生活が難しいかどうかも判断材料になります。
「待機人数○人」だけでは入所時期は分からない
特養は必要性を踏まえて入所順位を判断するため、待機者が多くても入所時期を単純に人数だけで予測することはできません。施設には「順位」だけでなく、「状況が変わったとき何を連絡すれば再評価されるか」を確認してください。
入所判定は誰がする?
特養では、地域の入所指針等に沿って、施設内の入所判定の仕組みで入所の必要性を検討します。
施設が入所を決定する
通常の介護保険による入所では、施設が本人の状態や優先度、受入体制等を確認して決定します。
要介護1・2では市区町村も関与する
特例入所では、施設と保険者である市区町村との情報共有等が行われます。
自治体ごとに具体的な指針がある
厚生労働省は、自治体と関係団体が地域の具体的な入所指針を作成することとしているため、評価項目や運用の詳細には地域差があります。
申込み後は何をする?
申込書を出したら終わりではありません。
連絡先を最新にする
家族の電話番号・住所が変わった場合は施設へ伝えます。
要介護度が変わったら連絡する
要介護2から3になった、要介護4から5になったなど、認定結果が変わった場合は施設へ知らせます。
介護者の状況が変わったら連絡する
介護者の入院、死亡、認知症、仕事継続困難など、在宅生活へ大きく影響する変化は重要です。
本人が入院したら連絡する
現在の居場所や医療状態が変わった場合も施設へ伝えます。
申込内容の更新が必要か確認する
施設・地域によっては、一定期間ごとの更新や現況確認が必要な場合があります。
更新期限
申込書に有効期限があるか、毎年確認が必要かを聞きます。
現況確認の連絡
施設から電話・書面で状況確認が来た場合は、現在の状態を正確に回答します。
連絡が取れない場合
施設によっては申込継続の意思確認ができないと取扱いが変わる場合があります。家族の連絡先は常に最新にしておきます。
入所の連絡が来たら確認すること
空床が出て候補になった場合、施設から本人の最新状態を確認されます。
現在の介護状態
歩行、排泄、食事、認知症症状などが申込時から変わっていないか伝えます。
医療処置
入院後に胃ろう、吸引、インスリン等が始まった場合、施設が対応できるか再確認します。
入所意思
現在もその施設への入所を希望するか、本人・家族で確認します。
入所前面談
施設職員が本人の状態を確認し、必要なケアや医療、持ち物、契約内容等を調整します。
入所前に追加で求められる書類
申込時の書類と、実際の入所決定後に必要な書類は異なることがあります。
入所決定後に確認されやすいもの
- 最新の介護保険関係書類
- 診療情報提供書等の医療情報
- 看護サマリー
- 最新の薬の情報
- 健康状態に関する施設指定書類
- 緊急連絡先
- 身元引受・契約に関する書類
- 費用の支払方法に関する書類
具体的な提出物は施設からの案内に従ってください。
申込時に医療情報を隠さない
入所を断られるのが心配で、認知症症状や医療処置を軽く伝えたくなることがあります。
入所後に対応できなくなる可能性がある
必要な吸引や夜間医療などを事前に伝えていないと、施設側が安全にケアできない場合があります。
正確な情報の方が施設を選びやすい
本人の状態に対応できない施設を避け、適切な体制の特養を探すためにも正確な情報が必要です。
最新状態を伝える
申込から時間がたった場合は、入所前に現在の病状・処置を改めて共有します。
申込前に費用も確認する
特養は比較的費用負担を抑えやすい施設ですが、本人の条件によって支払額は異なります。
施設サービス費
要介護度と介護保険の自己負担割合で変わります。
食費・居住費
居室タイプや負担限度額認定の有無によって変わります。
医療費・日常生活費
薬、通院、理美容、個人的な日用品等は別に必要になる場合があります。
申込時または見学時に、本人の条件で月額見積りを出してもらうと資金計画を立てやすくなります。
施設へそのまま聞ける質問
特養申込みの確認項目
- 申込書はどこでもらえますか
- 申込先は施設ですか、市区町村ですか
- 郵送でも申し込めますか
- 必要な添付書類をすべて教えてください
- ケアマネジャーに作成してもらう書類はありますか
- 要介護1・2の特例入所はどのように申し込みますか
- 複数施設へ同時に申し込めますか
- 申込書の有効期限・更新手続きはありますか
- 要介護度や家族状況が変わったら何を提出しますか
- 現在の待機状況はどうなっていますか
- 入所順位はどのような項目で判断しますか
- 入所候補になった後はどのような手続きがありますか
申込みを取り下げる場合
他の施設へ入居した、自宅での生活を続けることにしたなど、特養への入所希望がなくなる場合があります。
申込施設へ連絡する
不要になった申込みをそのままにせず、施設の手続きに従って取り下げます。
複数施設へ申し込んでいる場合
入所先が決まったら、他の申込施設にも連絡します。
一時的に希望しない場合
保留扱いができるか、改めて申込みが必要かは施設によって異なるため確認してください。
申込みを急ぐときでも施設選びは省略しない
在宅介護が限界になると「空いている特養ならどこでも」と考えたくなることがあります。
本人に必要な医療へ対応できるか
入所後すぐ退所になることを避けるため、医療処置・認知症ケア・看取りを確認します。
家族が通えるか
遠方施設では面会・通院同行が負担になることがあります。
本人の生活環境
居室、食事、職員の対応などを可能な範囲で見学します。
待機中の生活も整える
特養の申込みと並行して、ショートステイ、訪問介護、デイサービス等を使い、入所までの安全を確保します。
まとめ|特養申込みは「最新の地域ルール」を確認して進める
特養への申込みは、希望施設へ直接提出する方式や、地域の共通様式を利用する方式などがあり、申込先・必要書類は全国一律ではありません。
厚生労働省の入所指針でも、自治体と関係団体が具体的な入所指針を作成し、施設がその指針に沿って入所の必要性を判断する仕組みになっています。
また、要介護1・2の場合は、特例入所の要件を申込書に具体的に記載し、本人側が該当すると考える事情を伝えることとされています。申込み後も、要介護度や家族の介護力などが変化した場合には、施設へ最新情報を伝えることが重要です。
最も重要なのは、古い申込書をそのまま使ったり、「市役所へ出せば終わり」と考えたりせず、希望する施設へ最新の申込先・必要書類・更新方法を確認してから手続きを進めることです。
まず候補施設へ連絡し、「現在の申込書」「必要な添付書類」「申込後に必要な更新連絡」の3点を確認したうえで、本人の在宅生活の困難さを具体的に記載して申し込みましょう。



