老人ホームへ申し込んだ後、「家族の事情が変わった」「本人が入居を拒否した」「別の施設が見つかった」などの理由でキャンセルすることがあります。
そのとき気になるのが、申込金・予約金・前払金など、すでに支払ったお金が戻るのかという点です。
結論からいうと、老人ホームのキャンセル料は、申込みだけの段階なのか、入居契約を締結した後なのか、すでに入居を始めているのかによって考え方が変わります。
名称が「申込金」「予約金」であっても、契約上どのような性質のお金なのかを確認しなければ、返金の可否は判断できません。
まず結論|支払う前に「いつから契約成立か」「キャンセル時に返るか」を書面で確認する
老人ホームへ申込金・予約金などを支払うときは、①そのお金の目的、②入居契約が成立する時点、③キャンセル時の返金条件、④キャンセル料が発生する時点と計算方法を確認してください。有料老人ホームの標準指導指針では、入居開始可能日前に契約解除した場合、既受領金を全額返還することが示されています。契約後・入居後は前払金の返還や解約予告など別のルールが関係するため、「申込金」という名称だけで返金可否を判断しないことが重要です。
老人ホームのキャンセル料は必ずかかるわけではない
老人ホームへ申し込んだ後に取りやめても、必ずキャンセル料が発生するとは限りません。
まず現在の契約段階を確認する
施設への問い合わせ、見学、仮申込み、入居申込み、入居契約締結、入居開始後では、法的・契約上の状況が異なります。
特に重要なのが、「申込書を提出しただけなのか」「すでに入居契約書へ署名したのか」です。
家族側では「まだ予約しただけ」と思っていても、施設側では契約手続きが進んでいる場合があります。
キャンセル料は契約書・申込書の記載を確認する
キャンセル料がある場合は、いつから、いくら、どのような理由で発生するのかを確認します。
口頭で「キャンセルできます」と言われただけで判断せず、申込書、重要事項説明書、入居契約書などに記載された条件を確認してください。
POINT
「申込金」「予約金」「手付金」など名称だけでは、返還されるお金か判断できません。支払う前に、返金条件と契約成立時点を確認しましょう。
申込金・予約金とは
施設によっては、部屋を一定期間確保するためなどの理由で、申込み時に金銭を求める場合があります。
名称と実際の性質は必ずしも同じではない
「申込金」「予約金」という名称であっても、施設によって扱いが異なります。
単なる預り金として後で利用料へ充当する場合もあれば、契約手続きの一部として受領する場合もあります。
そのため、「これは最終的に何の費用へ充当されますか」「キャンセルした場合は全額返りますか」と確認します。
領収書・預り証を必ず受け取る
現金を支払う場合も振込みの場合も、金額、支払日、名目、受領者が分かる記録を残してください。
後から返金の話になったとき、何の名目で支払ったのか確認する資料になります。
入居開始前のキャンセルはどう扱われる?
有料老人ホームでは、入居開始前の契約解除について重要なルールがあります。
標準指導指針では入居開始可能日前の解除は全額返還
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、入居開始可能日前に契約解除となった場合について、既に受領した金銭を全額返還することが示されています。
また、契約に際しては、契約手続きや利用料等の支払方法について事前に十分説明することも求められています。
施設種別・契約内容は個別に確認する
この標準指導指針は有料老人ホームに関するものです。
すべての高齢者向け住まいや施設に同一の扱いがそのまま当てはまるとは限らないため、サ高住などを含め、実際の契約書と自治体の指導基準を確認してください。
「部屋を押さえたから返金不可」と言われたら確認すること
施設によっては、「申込み後に部屋を確保したので、キャンセルすると予約金は返せない」と説明される場合があります。
まず返金不可の根拠を聞く
「どの契約条項に基づくものですか」「何の損害に対する金額ですか」「計算方法を確認できますか」と聞きます。
単に「当施設のルールです」とだけ説明された場合は、書面で確認できる資料を求めます。
一般の消費者契約では過大な解約料が問題になる場合がある
消費者契約法では、事業者が定める解約料について、その解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効とされています。
ただし、個別の老人ホーム契約について実際にどの金額が妥当かは、契約内容や事情によって異なります。
高額なキャンセル料に疑問がある場合は、施設へ計算根拠を確認し、必要に応じて消費生活センターなどへ相談してください。
「一切返金しない」という説明だけで納得しない
高額な申込金・予約金・キャンセル料がある場合は、返金不可の根拠、契約成立時点、実際に発生した費用との関係を確認してください。疑問が残る場合は、その場で追加の支払いをせず、契約書類を持って外部窓口へ相談する方法があります。
前払金と申込金は同じではない
老人ホームでは「入居時に払うお金」が複数あり、混同しやすくなります。
前払金は将来の家賃・サービス費などを前払いする仕組み
有料老人ホームの前払金は、終身または一定期間にわたり支払う家賃やサービス費などの全部または一部を、入居時にまとめて支払う方式です。
厚生労働省の標準指導指針では、前払金の算定根拠を示し、返還額について入居契約書等へ明示して十分に説明することが求められています。
申込金・予約金は契約上の位置づけを確認する
申込金・予約金という名称は、前払金とは限りません。
前払金の一部として扱うのか、敷金へ充当するのか、利用料へ充当するのか、単なる預り金なのかを確認してください。
入居後すぐに退去する場合は返還金を確認する
いったん入居したものの、本人が施設生活に慣れない、病状が変化したなどの理由で短期間で退去する場合があります。
前払金には短期解約時の返還ルールがある
前払金を受領する有料老人ホームでは、老人福祉法に基づき、一定期間内に契約が終了した場合に返還する契約を結ぶことが求められています。
いわゆる短期解約特例として、入居後3か月以内に契約解除または入居者死亡となった場合の返還ルールがあります。
ただし、実際に利用した期間の家賃やサービス費など、契約に基づく利用分が控除される場合があります。
「3か月以内なら全額戻る」とは限らない
入居前のキャンセルと、入居後の短期解約は同じではありません。
入居後は、実際に利用した日数分などが差し引かれる場合があるため、返還金の計算式を確認します。
入居契約書で確認したいキャンセル関連項目
01
契約成立日
申込書提出時、契約書締結時、入金時など、どの時点で契約が成立するのかを確認します。
02
入居開始可能日
入居開始可能日前か後かによって、返金ルールが変わる場合があります。
03
契約解除の方法
電話だけでよいのか、書面提出が必要か、誰宛てに申し出るのかを確認します。
04
キャンセル料の有無と算定方法
いつから発生し、どの金額を基準に計算するのか確認します。
05
既に払った金銭の返還
申込金、予約金、敷金、前払金など、それぞれが返還されるかを確認します。
キャンセルを決めたら早めに施設へ連絡する
入居しないことが決まったら、施設への連絡を先延ばしにしないことが大切です。
電話だけで終わらせない
まず電話で担当者へ連絡し、その後、施設指定の解約届や申出書などがあるか確認します。
「いつ誰へキャンセルを申し出たか」を記録しておくと、後から解約日をめぐる認識違いを防ぎやすくなります。
返金額と返金予定日を確認する
支払済みのお金がある場合は、「返金される金額」「差し引かれる費用」「返金予定日」「振込先」を確認します。
可能であれば、返金計算書や精算書など書面で受け取ってください。
本人の入居拒否でキャンセルする場合
家族が入居先を決めた後、本人が強く拒否してキャンセルするケースがあります。
契約を急ぐ前に本人の意思を確認する
認知症があっても、本人が意思を示せる場合があります。
施設の写真を見せる、一緒に見学する、体験入居を利用するなど、できる範囲で本人が生活をイメージできるようにします。
「とりあえず押さえる」場合ほどキャンセル条件を確認する
空室が少ないと、「先に申し込んでから本人を説得しよう」と考えることがあります。
しかし、その後に本人が拒否すればキャンセルになる可能性があります。
申込み前に、キャンセル期限と返金条件を確認しておくことが重要です。
病状変化・入院で入居できなくなった場合
契約後、入居前に本人の病状が悪化し、予定していた施設へ入居できなくなることもあります。
本人都合として扱われるか確認する
病状変化があった場合の契約解除について、特別な扱いが定められているか確認します。
施設側が受け入れ不可と判断した場合と、家族側からキャンセルする場合で扱いが異なることも考えられます。
医療条件は申込前にできるだけ共有する
在宅酸素、経管栄養、インスリン、たん吸引など、入居可否に関係する医療情報は申込前に正確に伝えます。
情報不足のまま契約し、後から「対応できない」と分かる事態を減らすためです。
申込金を払う前に聞きたい質問
そのまま使える確認項目
- このお金は何の名目で支払うものですか
- 入居した場合は何の費用に充当されますか
- この時点で入居契約は成立しますか
- キャンセルした場合は全額返金されますか
- 返金されない場合、その根拠と計算方法は何ですか
- キャンセル料はいつから発生しますか
- 入居開始可能日はいつですか
- 本人の病状変化で入居できなくなった場合はどうなりますか
- 返金は何日以内に行われますか
- これらの条件が書かれた書面をもらえますか
複数施設へ同時に申込むときの注意点
退院期限が迫っているなどの理由で、複数施設へ同時に空室確認・申込みを進めることがあります。
それぞれの申込条件を確認する
資料請求や見学だけなら問題がなくても、「部屋を確保するための正式申込み」になると施設ごとに手続きが異なります。
申込金の有無、返金期限、キャンセル方法を施設ごとに整理します。
第一希望が決まったら他施設へ早めに連絡する
入居する施設が決まった後も他施設の申込みを放置すると、キャンセル手続きが遅れる可能性があります。
入居先を決めた段階で、不要になった候補へ早めに辞退を連絡してください。
キャンセル料でトラブルになったとき
説明と違う金額を請求された、返金不可と言われた、高額な解約料を求められたなど、疑問が生じることがあります。
まず契約書と精算明細を確認する
申込書、重要事項説明書、入居契約書、領収書、振込記録、メールなどをそろえます。
そのうえで、「どの契約条項に基づく請求か」「金額はどのように計算したか」を施設へ確認します。
外部相談窓口を利用する
施設と話し合っても解決しない場合は、消費生活センター、自治体の有料老人ホーム担当部署、法律専門家などへ相談する方法があります。
契約条件によって判断が変わるため、「このキャンセル料は必ず無効」と自己判断せず、実際の書類を示して相談してください。
契約前に確認する書類
キャンセル時のトラブルを減らすには、支払い前に書面を確認することが最も重要です。
01
申込書
申込金・予約金の金額、返金条件、申込みの有効期間を確認します。
02
重要事項説明書
利用料金、前払金、契約解除、返還金などを確認します。
03
入居契約書
契約成立日、入居開始可能日、解約条件、前払金返還などを確認します。
04
料金表・前払金返還金計算書
支払う金額の内訳と、途中解約時の返還計算方法を確認します。
「今申し込まないと埋まる」と言われても返金条件を確認する
人気施設や空室が少ない地域では、申込みを急ぎたくなることがあります。
空室確保と契約内容の確認を分けない
部屋を確保できても、キャンセル条件や費用を理解していなければ、後から家族の負担になります。
最低限、申込金の返金可否、入居開始可能日、契約成立時点、キャンセル料を確認してから支払います。
重要事項説明書を契約前に読む
有料老人ホームでは、契約に際し重要事項説明書や契約内容について十分な説明を受けることが重要です。
施設側から急かされた場合も、不明な料金条項を残したまま契約しないようにします。
まとめ|「申込金だから返らない」と決めつけず契約段階を確認する
老人ホームのキャンセル料は、申込み、契約締結、入居開始後のどの段階かによって扱いが異なります。
申込金・予約金・前払金という名称だけで判断せず、何のために支払うお金なのか、キャンセル時にいくら返還されるのかを確認してください。
有料老人ホームの標準指導指針では、入居開始可能日前の契約解除について、既受領金を全額返還することが示されています。また、前払金を受領する場合は返還額を契約書等へ明示し、十分に説明することが求められています。
特に重要なのは、「いつ契約が成立するか」「いつからキャンセル料が発生するか」「返金不可なら何を根拠にいくら差し引くのか」の3点です。
申込金を支払う前に書面で確認し、キャンセル時には返金額・計算根拠・返金予定日まで確認しておくと、金銭トラブルを防ぎやすくなります。