老人ホーム入居時に預り金を求められたときの確認ポイント

老人ホームへ入居するとき、「日用品代などに使うため、一定額を施設へ預けてください」と説明されることがあります。このお金は、入居一時金や敷金とは別の「預り金」として扱われる場合があります。

預り金そのものが直ちに不適切というわけではありませんが、本人のお金を施設が管理する以上、「何のために預けるのか」「誰が管理するのか」「使った記録を確認できるか」「退去時に残額が返るか」を契約前に確認することが重要です。

結論|預り金は「金額」より管理方法を確認する

有料老人ホームでは、入居者の金銭や預金は本人が管理することが原則です。本人が特に依頼した場合や、認知症等で適切な管理が難しく、身元引受人等の承諾を得た場合などには、施設が管理することがあります。その場合は、依頼・承諾を書面で確認し、具体的な管理方法や本人・身元引受人等への定期報告を管理規程等で定めることが厚生労働省の標準指導指針で示されています。預ける前に、用途、上限額、保管方法、出納記録、領収書、報告頻度、残額返還まで確認してください。

最初に確認する3点

  • そのお金は「預り金」なのか、敷金・前払金・保証金なのか
  • 何に使うお金で、本人や家族が利用明細を確認できるか
  • 退去・死亡時に残額をいつ、誰へ、どの方法で返すか

老人ホームの「預り金」とは?

老人ホームでいう預り金は、施設が入居者本人に代わって現金等を保管し、必要に応じて日常生活費などを支払うために使う仕組みを指すことがあります。

ただし、「預り金」という名称や対象範囲は施設によって異なります。契約書や管理規程で何を意味しているのか確認してください。

日用品・理美容などの日常費に使うケース

本人が自分で現金を管理しにくい場合、ティッシュや歯ブラシなどの日用品、理美容、個人的な買い物などに使うため、少額の現金を施設へ預けることがあります。

通帳や印鑑まで預かるケースもある

施設によっては、現金だけでなく預金通帳や印鑑等の管理を依頼される場合があります。

この場合は、単なる「小口現金の預かり」より管理範囲が広くなります。誰が保管し、誰が出金できるのか、内部チェック体制がどうなっているかまで確認する必要があります。

「預り金」という言葉だけで判断しない

数万円の日常生活費を預ける仕組みと、入居時にまとまった金額を支払う敷金・前払金では、目的も精算方法も違います。施設へ「このお金の法的・契約上の位置づけは何ですか」と確認してください。

預り金と敷金・入居一時金は何が違う?

項目 主な意味
預り金 本人の生活費等として施設が一時的に保管・管理するお金
敷金 家賃債務や原状回復等に備えて預けるお金
前払金・入居一時金 将来の家賃等の全部または一部を前もって支払うお金
保証金 名称だけでは内容を判断できず、契約上の目的確認が必要

返ってくる条件が違う

日常生活費として預けた預り金は、使用した分を差し引いた残額を返還するのが基本的な考え方です。

一方、敷金は未払金や原状回復費等を精算して返還されることがあり、前払金は契約上の償却・返還計算に従います。

「保証金」は中身を必ず確認する

施設によっては「保証金」という名称を使うことがありますが、名称だけでは敷金なのか預り金なのか、別の性質なのか判断できません。

重要事項説明書・入居契約書で、目的、返還条件、精算方法を確認してください。

施設が預り金を管理する場合の原則

厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居者の金銭・預金等は本人自身が管理することを原則としています。

施設管理を認める条件は本人管理の原則から確認する

預り金は、最初から施設管理を前提にするのではなく、本人管理が原則であることを起点に、例外的に施設へ任せる条件と同意方法を確認します。

本人管理が原則

本人が自分で金銭管理できるのであれば、施設が当然のように預かるのではなく、本人自身で管理することが基本です。

施設管理が認められる場面

標準指導指針では、本人が特に施設へ依頼した場合、または認知症等によって適切な金銭管理が難しいと認められ、身元引受人等の承諾を得た場合には、施設が管理することもやむを得ないとされています。

依頼・承諾は書面で確認する

施設が金銭等を管理する場合は、本人からの依頼または承諾を書面で確認することが求められています。

口頭で「こちらで預かります」と説明されるだけでなく、何を預け、何を委託するのかを書類で確認してください。

預ける前に管理規程を確認する

重要なのは、預り金の金額だけではなく、施設内部でどのように管理されるかです。

管理規程では「責任者・保管・記録・報告」を確認する

管理規程は有無だけでなく、誰が管理し、何をどのように保管し、支出記録をどう残し、誰へどの頻度で報告するかまで読みます。

誰が管理責任者か

管理者だけが扱うのか、出納担当者がいるのか、複数人でチェックする体制かを確認します。

現金・通帳・印鑑をどう保管するか

施錠できる金庫等で保管するのか、通帳と印鑑を分けて保管するのかなど、具体的な保管方法を確認します。

出納記録を残すか

いつ、何のために、いくら使ったかを個人別の台帳等へ記録する仕組みがあるか確認してください。

本人・家族へ定期報告するか

厚生労働省の標準指導指針では、本人または身元引受人等への定期的な報告についても管理規程等で定めることが示されています。

確認したい書類

  • 預り金管理規程
  • 預り金管理委託契約書や同意書
  • 預り証
  • 個人別出納台帳
  • 定期報告書・利用明細

いくら預けるのが適切?

預り金の適切な金額は、全国一律に「○万円まで」と決まっているわけではありません。

必要以上に多額の現金を施設へ預けるより、実際に必要な日常生活費を基準に考えるのが安全です。

まず何に使うかを確認する

日用品、理美容、嗜好品、受診時の立替など、施設が想定している用途を確認します。

月に必要な金額から考える

毎月数千円程度しか使わないのに、大きな金額を常時預ける必要があるのかを確認してください。

追加補充の方法も確認する

残額が少なくなったとき、家族が現金を持参するのか、振込できるのか、施設から連絡があるのかを確認します。

金額が高いほど安心とは限らない

預ける額が増えるほど、紛失・不正使用・相続時の確認など管理上のリスクも大きくなります。必要額と補充方法を決めて、施設へ預ける残高を必要以上に大きくしないことも重要です。

使ったお金はどう確認する?

預り金は、残高だけではなく「何に使ったか」を確認できることが重要です。

支出確認は「記録・証拠・報告」の3段階で見る

残高だけでなく、支出の根拠と定期報告まで追える状態になっているかを確認することで、預り金の透明性を判断しやすくなります。

出納台帳を見る

日付、用途、支出額、残高が記録されているか確認します。

領収書・レシートを確認する

日用品購入、理美容等の支出について、領収書やレシートを保管しているか確認します。

領収書が発行されない少額支出がある場合、施設内でどのように証拠を残すかも確認してください。

定期報告の頻度を確認する

毎月、数か月ごと、家族面談時など、どの頻度で本人・家族へ残高と利用明細を報告するかを確認します。

いつでも記録を確認できるか

東京都が公開している預り金等管理規程の参考例では、本人や保護者等が金銭出納記録の提示を求めた場合に記録を提示する仕組みが示されています。

これは東京都の参考例ですが、契約前に「必要なときに出納記録を確認できますか」と聞く際の参考になります。

管理手数料がかかる場合は何を見る?

施設によっては、金銭管理サービスに手数料を設定している場合があります。

何に対する料金か確認する

現金の保管だけなのか、通帳管理、支払代行、買い物代行などまで含むのかを確認します。

月額固定か利用ごとか確認する

毎月定額なのか、支払い代行1回ごとに料金がかかるのかで総額が変わります。

重要事項説明書・料金表と一致しているか確認する

口頭説明だけでなく、重要事項説明書、管理規程、料金表などに記載された内容と一致しているか確認してください。

退去・死亡時の残額返還を確認する

預り金では、預けるときだけでなく、管理を終えるときの手続きも重要です。

残額をいつ返すか

退去日に精算するのか、後日振込になるのか、返還時期を確認します。

死亡した場合は誰へ返すか

本人が亡くなった場合、預り金残額を誰へ返還するかは、相続関係や施設との契約内容を踏まえて手続きする必要があります。

「身元引受人だから自動的に受け取れる」とは限らないため、施設の手続き方法を確認してください。

最終明細を受け取れるか

退去・死亡時には、最終残高だけでなく、最後の支出まで反映した精算書や明細を受け取れるか確認します。

こんな説明を受けたら詳しく確認する

  • 「全員一律で高額な預り金が必要です」とだけ説明される
  • 何に使うかがはっきりしない
  • 書面での同意や契約がない
  • 出納記録や領収書を見せてもらえない
  • 誰が管理しているか説明できない
  • 残高の定期報告がない
  • 退去時の返還方法が契約書にない
  • 預り金・敷金・前払金の違いを説明してもらえない

これらがあるから直ちに不正と断定できるわけではありませんが、本人の財産を預ける契約として説明が十分かを慎重に確認してください。

預り金を自分で管理できないときの選択肢

認知症などで本人による金銭管理が難しい場合、施設へ全面的に任せる方法だけが選択肢ではありません。

本人の判断能力と必要な支援の大きさで選択肢を分ける

施設へ全面的に任せる前に、日常的な少額管理で足りるのか、福祉サービスの支援が必要なのか、法的な財産管理まで必要なのかを分けて考えます。

家族が必要額を管理する

日常生活費だけを施設へ預け、通帳・印鑑など重要な財産は家族等が別に管理する方法があります。

日常生活自立支援事業を相談する

判断能力に不安がある人については、社会福祉協議会等が福祉サービス利用援助や日常的金銭管理を支援する「日常生活自立支援事業」を利用できる場合があります。

成年後見制度を検討する

本人の判断能力が大きく低下しており、預貯金管理や契約行為全般の支援が必要な場合は、成年後見制度の利用を検討することがあります。

どの制度が適切か分からない場合は、地域包括支援センター、市区町村、社会福祉協議会などへ相談してください。

預り金を預ける前のチェックリスト

  • 預り金の目的を説明してもらった
  • 敷金・前払金・保証金との違いを確認した
  • 預けることが必須か、本人管理を選べるか確認した
  • 預ける金額と上限を確認した
  • 管理規程を確認した
  • 本人・家族の承諾を書面で残すか確認した
  • 誰が管理責任者か確認した
  • 現金・通帳・印鑑の保管方法を確認した
  • 出納台帳・領収書を確認できるか聞いた
  • 残高・利用明細の報告頻度を確認した
  • 管理手数料を確認した
  • 退去・死亡時の残額返還方法を確認した

まとめ|預り金は「何のため・誰が・どう管理・どう返す」を確認する

老人ホームで預り金を求められたときは、金額だけを見て判断しないことが大切です。

有料老人ホームでは、入居者の金銭・預金等は本人が管理することが原則です。施設が管理する場合には、本人の依頼や必要に応じた承諾を確認し、具体的な管理方法や本人・身元引受人等への定期報告を管理規程等で定めることが厚生労働省の標準指導指針で示されています。

契約前には、「何に使う預り金か」「誰が管理するか」「出納記録と領収書を確認できるか」「管理手数料はいくらか」「退去・死亡時の残額をどう返すか」まで確認してください。

預り金・敷金・前払金・保証金は名前が似ていても性質が違います。説明が曖昧な場合は、重要事項説明書、入居契約書、預り金管理規程を見せてもらい、納得してから預けることが重要です。

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