褥瘡処置が必要な人の老人ホーム選び

褥瘡(床ずれ)の処置が必要な人の老人ホームを探すとき、「毎日の処置まで施設で対応してもらえる?」「傷が深くても入居できる?」「訪問看護を使えばどの施設でも大丈夫?」と迷うことがあります。

褥瘡があっても老人ホームへ入居できる可能性はあります。ただし、受入可否は「褥瘡があるか」だけでは決まりません。

傷の深さ・大きさ・部位、滲出液、感染の有無、処置内容、処置頻度、体位変換、体圧分散寝具、栄養状態、失禁ケア、基礎疾患などによって必要な看護・介護体制は大きく異なります。

そのため施設探しでは、現在の褥瘡処置を誰が・どの頻度で行い、悪化したときにどの医療機関へつなぐのかまで具体的に確認することが重要です。

まず結論|「褥瘡対応可」ではなく処置内容と予防体制まで確認する

褥瘡処置が必要な人の老人ホーム選びでは、①褥瘡の部位・深さ・大きさ、②現在の外用薬・ドレッシング材・処置頻度、③看護職員の配置時間、④訪問看護の利用可否、⑤体位変換と体圧分散寝具、⑥栄養・水分管理、⑦失禁・スキンケア、⑧発熱・悪臭・滲出液増加など感染が疑われる場合の受診体制を確認します。処置だけでなく「新しい褥瘡を作らない」「今ある褥瘡を悪化させない」生活支援まで見て選んでください。

褥瘡処置が必要でも老人ホームに入れる?

褥瘡があることだけを理由に、すべての老人ホームへ入れないわけではありません。

受入可能な施設はある

看護職員がいる介護付き有料老人ホームや特養、訪問看護と連携できる住宅型有料老人ホーム・サ高住などで、褥瘡処置へ対応できる場合があります。

施設種別だけでは判断できない

同じ介護付き有料老人ホームでも、看護職員の勤務時間や褥瘡処置の経験、訪問看護の利用可否は異なります。

傷の状態によって必要な体制が変わる

浅い褥瘡で処置が比較的簡単な場合と、深い褥瘡、壊死組織、感染が疑われる褥瘡などでは必要な医療管理が違います。

POINT

施設へは「褥瘡があります」だけでなく、傷の部位、深さ、大きさ、滲出液、使用中の薬・被覆材、処置頻度、過去の感染歴まで伝えてください。

入居前に褥瘡の状態を整理する

施設の受入判断では、現在の創部状態を正確に共有することが重要です。

施設へ共有したい褥瘡情報

  • 褥瘡がある部位
  • 傷の深さ・大きさ
  • いつ頃できたか
  • 滲出液の量
  • 出血の有無
  • 悪臭の有無
  • 発赤・腫れ・熱感・痛み
  • 壊死組織の有無
  • 現在使用している外用薬・ドレッシング材
  • 処置頻度
  • 過去の感染・入院歴
  • 主治医・褥瘡を診ている医療機関

褥瘡処置は誰が行うか確認する

褥瘡の処置には、傷の観察、洗浄、外用薬、ドレッシング材の交換などが含まれることがあります。

施設看護師が対応する場合

医師の指示に基づき、施設内の看護職員が処置する施設があります。

訪問看護を利用する場合

住宅型有料老人ホームやサ高住などでは、外部の訪問看護師が定期的に処置する場合があります。

処置時間を確認する

毎日必要なのか、数日に一度なのか、入浴後に行うのかなど、現在の指示と施設の看護体制が合うか確認します。

医師の診察が必要な場合

傷の状態が変わったとき、訪問診療医・皮膚科・形成外科等へ相談できる体制を確認してください。

看護師の配置時間を確認する

褥瘡処置が必要な人では、「看護師がいるか」だけでなく勤務時間が重要です。

日中のみ配置の場合

処置を日中に行えるなら対応できる場合があります。

夜間に看護師がいない場合

夜間に出血、発熱、創部からの大量の滲出液などが起きた場合、誰が看護師・医師へ連絡するのか確認します。

オンコール体制

夜間は施設外の看護師へ連絡する方式の場合、電話助言だけなのか、必要時に訪問できるのかを確認してください。

「毎日処置できるか」を具体的に聞く

「褥瘡対応可」と説明されても、施設によって対応できる処置内容は異なります。

必要な頻度で交換できるか

ドレッシング材の交換頻度は傷の状態や使用製品によって異なります。主治医・看護師の指示どおりに交換できるか確認します。

処置に必要な時間を確保できるか

褥瘡が複数ある、処置が複雑などの場合、1回の処置に時間がかかることがあります。

物品の準備方法

外用薬、ガーゼ、ドレッシング材などを医療機関・薬局・施設のどこが準備するのか確認します。

傷に合った処置を続けられるか確認する

日本褥瘡学会は、褥瘡の状態に応じて外用薬や創傷被覆材等を選択し、傷を継続的に観察することが重要としています。

同じ薬を漫然と使わない

傷の状態は時間とともに変化します。滲出液、壊死組織、感染の有無などに応じて処置内容が見直されることがあります。

処方変更をすぐ共有できるか

医師が外用薬や被覆材を変更した場合、施設・訪問看護・薬局へ情報が伝わる仕組みを確認します。

施設だけで自己判断しない

傷が悪化した場合に、施設職員だけで処置を変更せず医師・看護師へ相談できることが重要です。

感染が疑われる場合の対応を確認する

褥瘡では、傷の状態によって感染を起こすことがあります。

日本褥瘡学会も、感染を疑う場合には適切なデブリードマンや抗菌薬治療が必要になることがあるため、早めに医師・看護師へ相談するよう案内しています。

発熱

発熱だけでなく、食欲低下、元気がないなど高齢者特有の変化も確認します。

悪臭・滲出液の変化

急に臭いが強くなった、滲出液が増えた、色が変わったなどの変化を記録できるか確認します。

発赤・腫れ・熱感

創周囲の赤みや腫れが広がる場合は医療職へ相談します。

発熱や創部の急な悪化は早めに医療へ

褥瘡の感染が疑われる場合、施設内の処置だけでは対応できないことがあります。発熱、悪寒、急な意識変化、創周囲の強い発赤・腫れ、悪臭・滲出液の増加などがあれば、主治医や医療機関へ速やかにつなげられる体制を確認してください。

デブリードマンが必要な場合

褥瘡に壊死組織がある場合、状態によってデブリードマンと呼ばれる壊死組織除去が検討されることがあります。

施設内で完結するとは限らない

処置内容によっては、皮膚科、形成外科、外科等の医療機関で対応する必要があります。

通院・往診を確認する

施設から受診するのか、訪問診療で対応できるのか確認します。

家族付き添いの有無

通院同行が施設サービスに含まれるか、家族対応か、別料金かも確認してください。

体位変換は「何時間ごと」と一律に考えない

褥瘡予防では、同じ部位への長時間の圧迫を避けることが重要です。

ただし、体位変換の頻度は本人の身体状態、自力体動、骨突出、使用する体圧分散寝具などによって異なります。

本人に合った体位変換計画があるか

「全員2時間ごと」など一律ではなく、看護・介護職員が本人の状態に合わせて計画しているか確認します。

夜間も必要な介助を続けられるか

自力で寝返りできない人では、夜勤帯にも体位変換を行える人員が必要です。

ずれ・摩擦を減らせるか

体位変換時に皮膚を引きずらず、必要な介助用品を使えるか確認します。

体圧分散マットレスを確認する

日本褥瘡学会は、褥瘡予防で体圧分散寝具を本人の自力体動や骨突出等を考慮して選ぶことを勧めています。

現在のマットレスを持ち込めるか

病院や自宅で使用中のエアマットレス等がある場合、施設でも継続できるか確認します。

施設側で変更できるか

症状悪化や褥瘡の部位に応じて、別の体圧分散マットレスへ変更できるか聞きます。

機器の管理

電動エアマットレスの場合、設定・電源・停電時の対応も確認します。

車椅子のクッションも重要

仙骨や臀部に褥瘡がある人が長時間車椅子へ座る場合、座面の圧にも注意が必要です。

体圧分散クッション

本人の姿勢・褥瘡部位に合うクッションを使用できるか確認します。

長時間座り続けない

本人の状態に応じてベッドで休む時間を設けるなど、同じ姿勢を長く続けない支援が必要です。

姿勢調整

身体が傾く、ずり落ちるなどがある場合、理学療法士・作業療法士等へ相談できるか確認します。

栄養状態を確認する

日本褥瘡学会は、褥瘡予防の基本として低栄養の回避・改善を挙げています。

食事摂取量

毎日の摂取量を把握し、食事量が低下した場合に管理栄養士へ相談できるか確認します。

体重変化

定期的に体重を測り、減少傾向がないか確認します。

たんぱく質・エネルギー

低栄養がある場合は、基礎疾患を考慮しながら医師・管理栄養士等が栄養方法を検討します。

経管栄養の場合

胃ろう等を使用している人は、必要な栄養・水分管理を施設で継続できるか確認します。

失禁・スキンケアを確認する

尿・便失禁による皮膚の湿潤や刺激は、皮膚トラブルにつながります。

排泄後すぐ清潔にできるか

排泄物が皮膚に長く付着しないよう、必要なタイミングでおむつ交換・洗浄ができるか確認します。

皮膚を強くこすらない

日本褥瘡学会は、失禁時のスキンケアとして優しく洗浄し、皮膚保護剤等を活用することを紹介しています。

失禁関連皮膚炎との区別

赤みがすべて褥瘡とは限りません。皮膚状態を看護職員等が評価し、必要時に医師へ相談できることが重要です。

糖尿病・末梢循環障害がある場合

糖尿病、末梢動脈疾患などがある人では、創傷治癒に影響することがあります。

基礎疾患も同時に管理する

血糖、循環状態、服薬等を主治医の指示に沿って管理します。

足の傷も確認する

踵や足趾などに傷がある場合、圧迫だけでなく血流等の評価が必要になることがあります。

専門医への受診

治りにくい傷は、褥瘡以外の原因も含めて医療機関で評価してもらいます。

痛みの有無を確認する

褥瘡には痛みを伴うことがあります。

処置時の痛み

ドレッシング材交換時に強い痛みがある場合、医師・看護師へ相談できるか確認します。

体位変換時の痛み

関節拘縮や骨折後などで姿勢変更自体が痛い人では、クッションや介助方法を工夫する必要があります。

認知症がある場合

痛みを言葉で訴えにくい人では、表情、拒否、落ち着かなさなどから痛みを推測できるケアが重要です。

認知症がある人の褥瘡ケア

認知症があると、処置を嫌がる、ドレッシング材を外す、体位変換を拒むことがあります。

なぜ嫌がるのか確認する

痛い、怖い、何をされるのか分からないなど、拒否の背景を考えます。

説明してから触れる

短い言葉でこれから何をするか伝え、本人の反応を見ながら進めます。

身体拘束に頼らない

ドレッシング材を触ることだけを理由に、安易な身体拘束を前提にしない施設か確認します。

訪問看護を使う場合の確認点

外部の訪問看護を利用する場合は、施設と訪問看護の役割分担を明確にします。

訪問頻度

本人に必要な処置回数へ対応できるか確認します。

訪問看護が来ない日の処置

毎日処置が必要なのに訪問看護が週数回の場合、残りの日を誰が対応するか確認します。

傷の写真・記録

必要に応じて創部の大きさや状態を記録し、医師・施設と変化を共有できるか聞きます。

緊急時

急な悪化時に訪問看護へ連絡できる体制か確認します。

定期的に傷を評価しているか確認する

褥瘡は「処置を続けていればよい」のではなく、改善しているかを評価することが重要です。

大きさ・深さの変化

定期的に創部を観察し、縮小しているか、深くなっていないか確認します。

滲出液・壊死組織

量や性状が変化していないか記録します。

DESIGN-R等の評価

医療・看護現場では、日本褥瘡学会のDESIGN-R等を用いて褥瘡状態を評価することがあります。施設や訪問看護がどのように経過を共有しているか確認してください。

通院・往診体制を確認する

褥瘡が深い、治りにくい、感染を繰り返す場合は医師の診察が必要です。

訪問診療

施設で創部を診てもらえるか、写真だけでなく必要時に直接診察できるか確認します。

皮膚科・形成外科等への通院

専門的な処置が必要になった場合の受診先を決めておきます。

通院付き添い

施設職員が同行するのか、家族が必要か、費用はいくらか確認します。

入院後に施設へ戻れるか確認する

感染や外科的治療等で入院する場合があります。

退院時に傷が悪化していた場合

処置回数や介助量が増えても再受入れできるか確認します。

新しい医療機器が増えた場合

陰圧閉鎖療法等の特殊な治療が継続する場合は、施設で対応できるか個別確認が必要です。

退院前カンファレンス

病院と施設・訪問看護が処置内容や体位変換、栄養管理を共有できるか確認します。

施設見学で確認したいポイント

01

看護体制

褥瘡処置を行える看護職員が何時までいるか確認します。

02

体位変換

自力体動が難しい人へ夜間も必要な体位変換を行えるか確認します。

03

体圧分散寝具

エアマットレス等を本人の状態に合わせて使用・変更できるか確認します。

04

栄養・失禁ケア

管理栄養士への相談、排泄後のスキンケアまで確認します。

05

悪化時の医療連携

感染・壊死・出血等があった場合の医師・病院との連携を確認します。

施設へそのまま聞ける質問

褥瘡処置の確認項目

  • この深さ・部位の褥瘡でも入居できますか
  • 褥瘡処置は誰が行いますか
  • 毎日処置が必要でも対応できますか
  • 看護師は何時から何時まで勤務していますか
  • 訪問看護を併用できますか
  • 夜間の体位変換はできますか
  • 体圧分散マットレスを使用できますか
  • 車椅子用クッションを持ち込めますか
  • 管理栄養士へ栄養相談できますか
  • 失禁後のスキンケアはどのように行いますか
  • 発熱・悪臭・滲出液増加があった場合はどうしますか
  • 皮膚科・形成外科等への通院に付き添えますか
  • 入院後に褥瘡が悪化しても戻れますか

主治医・看護師へ入居前に確認したいこと

医療職へ確認したい内容

  • 褥瘡の現在の評価
  • 使用する外用薬・被覆材
  • 処置頻度
  • 体位変換・除圧で必要なこと
  • 推奨されるマットレス・クッション
  • 入浴・洗浄方法
  • 栄養管理上の注意
  • 感染を疑うサイン
  • どの状態になったら受診が必要か
  • 今後デブリードマン等が必要になる可能性

「処置ができる」だけで施設を決めない

褥瘡治療では、傷の処置だけでなく毎日の生活そのものが重要です。

ベッド上の時間

必要以上に寝たきりにせず、本人の体力に合わせて離床できるか確認します。

座位時間

車椅子に長時間座り続けないよう、本人の状態に合わせて休息を取れるか確認します。

入浴・清潔

傷を理由に一律に入浴を禁止せず、医療職の指示に沿った清潔保持ができるか確認します。

本人の生活

処置のためだけに生活全体が制限されず、食事、会話、外出、レクリエーションなど本人が望む活動を続けられるか確認します。

まとめ|処置と「褥瘡を悪化させない生活」の両方を確認する

褥瘡処置が必要な人でも、傷の状態と施設の看護・介護体制が合えば老人ホームへ入居できる可能性があります。

日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、褥瘡管理を局所処置だけで考えず、体圧分散、体位変換、栄養、スキンケアなどを含めて総合的に行う考え方が示されています。

また、褥瘡の状態は時間とともに変化するため、外用薬やドレッシング材を固定的に使い続けるのではなく、創部を継続的に観察し、必要に応じて医師・看護師が治療を見直すことが重要です。

最も重要なのは、「褥瘡処置ができる施設」ではなく、「傷を毎日適切に評価・処置しながら、体圧、栄養、排泄、皮膚、活動まで整えて悪化・再発を防げる施設か」を確認することです。

入居前には主治医・病院看護師等から最新の創部状態と処置指示を整理してもらい、施設・訪問看護・医師の役割分担、夜間対応、悪化時の受診先まで具体的に確認して選びましょう。

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