介護医療院の終末期ケアとは?

介護医療院を検討していると、「最期まで施設で過ごせるのか」「終末期になると病院へ移らなければならないのか」「延命治療を希望しない場合はどのように対応してもらえるのか」と気になることがあります。

介護医療院は、長期療養のための医療と日常生活上の介護を一体的に提供する介護保険施設です。看取りやターミナルケアにも対応する役割があり、本人の意思を基本として、医師・看護職員・介護職員などの多職種が本人・家族と話し合いながら人生の最終段階の医療・ケアを進めます。

結論|介護医療院では、本人の意思を尊重しながら最期まで医療と介護を受けることができる

介護医療院では、医師が回復の見込みがないと判断した場合などに、本人・家族等の同意のもとでターミナルケアの計画を作成し、医師・看護職員・介護職員・管理栄養士などが連携して終末期のケアを行う体制が制度上組み込まれています。2024年度介護報酬改定後は、終末期に限らず原則として入所者全員について、本人の意思決定を基本に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みが求められています。ただし、具体的に対応できる医療処置や急変時の搬送方針、家族の付き添い環境などは施設によって異なるため、入所前に確認が必要です。

最初に確認する3点

  • 本人の意思確認と家族共有ができるか
  • 急変時の搬送・看取り方針を確認する
  • 医療・介護・栄養の連携体制を見る

介護医療院の終末期ケアとは

終末期ケアとは、病気や身体状態の回復が難しく、人生の最終段階にある人に対して、本人の苦痛をできるだけ和らげながら、その人らしい生活を支える医療・介護を行うことです。

介護医療院では、医療だけ、介護だけに分けるのではなく、長期療養の生活の中で両方を組み合わせて支援します。

「治す医療」だけでなく苦痛を和らげるケアを行う

人生の最終段階では、病気そのものを治す治療だけでなく、痛み、息苦しさ、吐き気、不安、口の乾燥など、本人が感じているつらさを和らげることも重要になります。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でも、痛みやその他の不快な症状を十分に緩和し、精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが示されています。

生活の場としてのケアも続く

終末期になっても、食事、排泄、清潔保持、体位変換、口腔ケア、家族との時間など、日常生活への支援がなくなるわけではありません。

本人の体力や病状に合わせて、負担をできるだけ減らしながら、その人に必要な生活支援を続けます。

介護医療院では誰が終末期ケアを支える?

介護医療院の終末期ケアは、一人の医師だけで方針を決めるものではありません。

医師

病状を診断し、回復の見込み、今後予想される経過、必要な医療について本人・家族へ説明します。本人の希望や医学的妥当性を踏まえ、医療・ケアチームと方針を検討します。

看護職員

体調の観察、服薬、医療処置、症状への対応などを行います。本人の小さな変化を把握し、必要に応じて医師へ報告します。

介護職員

食事、排泄、清潔保持、体位変換など、日常生活の支援を行います。日々の関わりの中で本人の表情や反応の変化を把握する役割もあります。

管理栄養士などの専門職

食事量や栄養状態を確認し、本人の病状や食べる力に合わせた支援を検討します。必要に応じてリハビリ専門職、薬剤師、介護支援専門員なども関わります。

POINT

介護医療院のターミナルケアでは、医師、看護職員、介護職員、管理栄養士などが共同し、本人の状態や家族の求めに応じて説明を行い、同意を得ながらケアを進めることが制度上求められています。

終末期の医療・ケアは本人の意思を基本に決める

介護医療院の終末期ケアで最も重要なのは、本人がどのような医療やケアを望むのかという意思です。

2024年度介護報酬改定では、介護医療院の施設サービス計画の作成やサービス提供に当たり、本人の意思決定を基本として、関係者と連携しながら本人の意思を尊重した医療・ケアを行うことが求められました。

元気なうちから希望を話し合う

本人が意思を伝えられるうちに、人生の最終段階でどのような医療・ケアを望むかを家族や医療・介護従事者と話し合っておくことが大切です。

このように、将来の医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みをACP(アドバンス・ケア・プランニング)、厚生労働省では「人生会議」と呼んでいます。

一度決めた希望を変えてもよい

本人の意思は、病状や生活状況によって変わることがあります。そのため、一度書類へ署名したら最後まで変更できないというものではありません。

厚生労働省のガイドラインでも、本人の意思は変化し得るため、医療・ケアの方針について繰り返し話し合うことが重要とされています。

「何をしてほしくないか」だけでなく「どう過ごしたいか」を話す

心肺蘇生や救急搬送の希望だけではなく、「できるだけ苦しくないようにしたい」「家族と一緒に過ごしたい」「食べられるうちは口から食べたい」など、本人が大切にしていることも共有します。

本人が意思を伝えられなくなった場合はどうする?

認知症の進行や意識状態の低下などにより、本人が自分の希望を伝えられない場合があります。

以前の本人の意思を確認する

本人が過去に話していた希望、事前に作成した文書、家族との会話などから、本人がどのような医療・ケアを望んでいたかを確認します。

家族等が本人の意思を推定できる場合

家族等が本人の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重し、本人にとって最善と考えられる医療・ケアの方針を医療・ケアチームで慎重に検討します。

本人の意思を推定できない場合

本人の意思が分からない場合は、家族等と十分に話し合い、本人にとって何が最善かという観点から方針を検討します。

家族一人だけにすべての判断を負わせるものではない

人生の最終段階の医療・ケアは、本人の意思を基本としながら、医師だけ、家族だけで決めるのではなく、多職種の医療・ケアチームで慎重に方針を検討することが重要です。

介護医療院のターミナルケアにはどんな条件がある?

介護医療院の基本報酬におけるターミナルケア体制では、単に「看取り可能」と掲げるだけではなく、一定の条件が示されています。

医師が回復の見込みがないと判断する

一般に認められている医学的知見に基づき、医師が回復の見込みがないと診断した人が対象となります。

本人または家族等の同意を得て計画を作成する

本人または家族等へ説明を行い、同意を得たうえでターミナルケアに関する計画を作成します。

多職種で説明しながらケアを行う

医師、看護職員、介護職員、管理栄養士などが共同し、本人の状態の変化や家族の求めに応じて随時説明を行います。

終末期は状態が短期間で変化することがあるため、一度説明して終わりではなく、状況に応じて方針を確認し直すことが重要です。

どのような医療を受けるかは一律ではない

「終末期ケア=何も治療しない」という意味ではありません。

本人の病状、医学的な必要性、本人の希望を踏まえて、どこまで医療を行うかを検討します。

症状を和らげる医療

痛みや息苦しさなどがある場合は、本人の苦痛を軽減するための医療を検討します。薬の使用方法や対応できる処置は本人の病状と施設の医療体制によって異なります。

酸素・吸引・経管栄養など

介護医療院には、喀痰吸引や経管栄養など医療ニーズの高い人を受け入れる役割があります。

ただし、個別の処置について「介護医療院ならどの施設でも対応できる」と断定はできません。必要な頻度、時間帯、本人の病状、施設の人員・設備によって受入可否が異なります。

救急搬送や入院を希望するか

急変時に病院へ搬送するのか、可能な範囲で介護医療院内のケアを続けるのかは、本人の希望、医学的な必要性、施設で対応できる範囲を踏まえて検討します。

急変時の対応方針は事前に確認する

「看取り対応あり」と聞くだけでなく、発熱、呼吸状態の悪化、意識低下などが起きた場合に、どのような条件で医師へ連絡し、どのような場合に救急搬送するのかを確認してください。

食べられなくなったときはどうする?

人生の最終段階では、食事や水分を取る量が少なくなることがあります。

このとき、「食べられないから必ず経管栄養にする」「点滴を必ず行う」と全国一律に決まっているわけではありません。

本人の状態と希望を確認する

食べる力や飲み込む力、本人の苦痛、病状などを確認し、医師や看護職員、管理栄養士などが対応を検討します。

口から食べることを支える場合もある

安全に食べられる範囲で、食形態、一口量、姿勢、介助方法などを調整し、本人が口から食べることを支援する場合があります。

無理に食べさせることが本人の負担になる場合もある

終末期には身体が食事を受け付けにくくなることもあります。本人の状態を見ずに無理に食事量を増やすことが適切とは限りません。

確認のポイント

食事量が落ちた場合に「経管栄養をする・しない」だけを考えるのではなく、本人の希望、嚥下状態、苦痛、病状を踏まえて何が最善かを医療・ケアチームと話し合います。

家族は終末期にどのように関われる?

本人が人生の最終段階を迎えたとき、家族がどの程度そばで過ごせるかは、施設選びでも重要な確認事項です。

面会や付き添いのルールを確認する

通常の面会時間とは別に、看取り期には面会時間を柔軟にしている施設もあります。

夜間の面会、家族の宿泊、付き添い用の椅子やベッド、家族が休める場所などは施設によって異なります。

状態変化をどのように連絡してもらえるか

食事量の低下、眠っている時間の増加、呼吸状態の変化などがあったときに、誰から家族へ連絡するのかを確認します。

最期が近づいたときの説明

状態が変化した場合は、今後予想される経過や行うケアについて、医師や職員から説明を受けます。

分からないことがあれば、「今どのような状態か」「何が本人の負担になるか」「家族にできることは何か」を確認してください。

介護医療院の看取り費用はどう考える?

介護医療院の看取りに関する介護報酬の仕組みは、老健などで設けられている「ターミナルケア加算」と同じではありません。

ターミナルケア体制は基本報酬の要件に組み込まれている

厚生労働省の介護報酬資料では、介護医療院についてはターミナルケアを行う体制が基本報酬の算定要件に組み込まれています。

そのため、「看取りを行ったから介護医療院で必ず別のターミナルケア加算が追加される」と単純に考えるものではありません。

実際の自己負担は本人ごとに確認する

介護医療院の利用料金は、要介護度、施設の類型・算定するサービス費、介護保険の自己負担割合、食費・居住費、その他の実費などによって変わります。

終末期に使用するサービスや医療の内容によって費用の扱いが異なる場合があるため、具体的な自己負担額は施設へ確認してください。

「看取り無料」「終末期は一律○円」とは判断しない

制度上の基本報酬と、本人が実際に支払う総額は同じではありません。終末期になった場合に費用がどう変わるか、追加で発生する実費があるかを重要事項説明書や料金表で確認してください。

入所前に確認したい終末期ケアの8項目

「看取り対応」と書いてあるだけでは、本人・家族が希望する最期を迎えられるかは分かりません。見学や入所相談では具体的に確認します。

01

施設内で看取りまで対応できますか?

過去の実績だけでなく、本人の病状ではどこまで対応できる見込みか確認します。

02

看取り方針はいつ話し合いますか?

入所時から希望を確認するのか、病状が変化した時点で改めて話し合うのかを聞きます。

03

本人の意思をどのように記録・共有しますか?

心肺蘇生、救急搬送、栄養・水分などの希望を、どの書類に記録し、職員間でどう共有するか確認します。

04

夜間の医療・看護体制はどうなっていますか?

夜間に看護職員が勤務しているか、医師への連絡方法、急変時の対応を確認します。

05

痛みや息苦しさにどう対応しますか?

症状緩和の方針と、必要な薬・処置へどこまで対応できるかを確認します。

06

食べられなくなったときはどうしますか?

食事・水分・経管栄養・点滴などについて、本人の意思をどう確認し、どのように判断するか聞きます。

07

家族はどこまで付き添えますか?

看取り期の面会時間、夜間面会、宿泊、家族が休める場所の有無を確認します。

08

終末期になると費用はどう変わりますか?

介護保険自己負担、食費・居住費、医療や日用品など、本人の場合の費用の変化を確認します。

看取り対応の有無だけで施設を判断しない

介護医療院に看取り体制があっても、本人が希望する終末期ケアと施設の対応方針が合っているとは限りません。

希望する医療に対応できるか

酸素、吸引、疼痛管理など、本人が必要になる可能性のある医療について施設の対応範囲を確認します。

希望しない医療についても話せるか

本人が希望しない治療や救急搬送がある場合は、その希望をどのように確認・記録するのかを聞きます。

本人の希望が変わったときに見直せるか

人生の最終段階に関する意思は変わる可能性があります。定期的に本人・家族と話し合い、施設サービス計画や終末期の方針を見直す仕組みがあるか確認してください。

見学時の最終チェック

  • 施設内で看取りまで対応できるか
  • ACP・人生会議をどのように行っているか
  • 終末期の計画を誰と作成するか
  • 夜間の医療・看護体制
  • 苦痛を和らげる医療への対応
  • 急変時・救急搬送の考え方
  • 食事や栄養が取れなくなった場合の方針
  • 家族の面会・付き添い環境
  • 本人の希望を変更・見直しできるか
  • 終末期に費用がどう変わるか

まとめ|介護医療院の終末期ケアは本人の意思を中心に考える

介護医療院では、長期療養のための医療と日常生活上の介護を提供しながら、人生の最終段階を施設内で支える体制が制度上設けられています。

医師が回復の見込みがないと判断した場合などには、本人・家族等の同意を得てターミナルケアの計画を作成し、医師、看護職員、介護職員、管理栄養士などが連携してケアを行います。

ただし、終末期ケアで最も大切なのは「施設が何をしてくれるか」だけではありません。本人がどのような医療を望み、どのように過ごしたいのかを、意思を伝えられるうちから家族や医療・ケアチームと話し合い、状態や気持ちの変化に応じて繰り返し確認することが重要です。

入所前には「看取りできますか?」だけでなく、夜間体制、症状緩和、救急搬送、食事・栄養、家族の付き添い、意思確認の方法、費用まで具体的に確認してください。

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