介護付き有料老人ホームに入居したあと、要介護1から要介護3、要介護5へと介護度が上がった場合、「このまま住み続けられるのか」「介護が重くなったら退去になるのか」と不安になる方もいるでしょう。
結論からいうと、要介護度が上がったことだけを理由に、全国一律で退去しなければならないわけではありません。
介護付き有料老人ホームで利用する特定施設入居者生活介護は、要介護1〜5の区分ごとに介護報酬が設定されており、重度化した人への介護も制度上想定されています。
ただし、実際に住み続けられるかは、本人に必要となった介護・医療の内容、ホームの人員・医療連携体制、居室の運用、入居契約や退去条件などによって変わります。
まず結論|このページで最も重要な内容
介護度が上がったら、まず確認するのは「退去になるか」ではなく、増えた介護・医療ニーズにそのホームが対応できるかです。
食事・排せつ・移乗などの介助が増えただけで直ちに退去になるとは限りません。一方、医療処置が増えた、夜間に継続的な看護が必要になった、長期入院が必要になったなど、ホームの対応範囲を超える場合には、居室変更や医療機関・他施設への移行を相談することがあります。契約書・重要事項説明書の退去条件もあわせて確認してください。
要介護度が上がっても、そのまま住み続けられることは多い
介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、入居者へ介護サービスを提供する有料老人ホームです。
特定施設入居者生活介護の介護報酬は、要介護1・2・3・4・5それぞれについて設定されています。
つまり、制度上も要介護度の高い人への介護サービスが想定されており、要介護3や要介護5になったこと自体が、一律の退去条件になるわけではありません。
介護度が上がると必要な介護内容が変わる
一方、同じホームに住み続けられるかを考えるうえで重要なのは、要介護度の数字そのものより、本人が実際にどのような介助を必要とするようになったかです。
たとえば、介護度が上がることで次のような支援が増えることがあります。
- 歩行から車いす介助へ変わる
- ベッドと車いすの移乗に全面介助が必要になる
- 排せつ介助の回数が増える
- 食事介助が必要になる
- 入浴で機械浴などが必要になる
- 夜間の見守りや介助が増える
- 認知症の進行により継続的な見守りが必要になる
こうした介護量の増加にホームが対応できる場合は、要介護度が上がっても継続して生活できることがあります。
介護度が上がったら何が変わる?
要介護度が上がると、ホームでの生活すべてが一律に変わるわけではありません。
主に確認したいのは、介護サービス、介護保険自己負担、ケアプラン、生活上の介助、医療対応などです。
ケアプランが見直される
本人の心身状態が変化した場合は、現在のケア内容が本人に合っているかを見直す必要があります。
移動、排せつ、入浴、食事、認知症への対応など、増えた支援を踏まえてケアプランを調整します。
介護保険の自己負担が変わる
特定施設入居者生活介護では、要介護度ごとに基本となる介護報酬が設定されています。
そのため、要介護度が上がると、介護保険サービスの自己負担額も増えるのが基本です。
ただし、家賃、管理費、食費などまで要介護度に連動して一律に上がるわけではありません。
費用については、別途、料金表や重要事項説明書を確認してください。
介助方法や使用する設備が変わることがある
本人の状態によっては、普通浴から機械浴へ変更する、歩行器から車いすへ変更する、居室内に介護ベッドや福祉用具を追加するなど、生活環境を調整することがあります。
介護度の変化だけでなく、本人の実際の身体機能に合わせて必要な支援を検討します。
介護が重くなっただけで退去になる?
介護量が増えたことだけで、直ちに退去になるとは限りません。
介護付き有料老人ホームは、施設職員から日常的な介護を受けながら生活することを前提としたホームです。
ただし、ホームごとに人員配置、設備、入居条件、対応できる状態が異なります。
ホーム内で対応できる介護なら継続入居しやすい
排せつ、食事、移乗、入浴などの介助量が増えても、ホームの職員体制や設備で対応できる範囲であれば、継続して生活できる場合があります。
入居時より介護度が上がること自体は珍しいことではないため、将来の重度化まで想定しているホームもあります。
人員・設備上対応が難しくなる場合もある
一方、必要な介助量が大きく増え、現在のホームの設備や人員では安全な生活を支えにくくなる場合があります。
その場合は、居室変更、介護方法の見直し、医療機関との連携、他施設への移行などを相談することがあります。
「ホームの都合で介護度が上がったら自動退去」という扱いではなく、入居契約にどのような条件が定められているかを確認することが大切です。
退去につながりやすいのは「介護度」より医療ニーズの変化
介護度が上がったとき、継続入居を左右しやすいのが医療面の変化です。
介護付き有料老人ホームには看護職員が配置されていますが、病院と同じ医療体制ではありません。
医療処置が新たに必要になった場合
病状の変化により、入居時にはなかった医療処置が必要になることがあります。
この場合は、処置の種類だけでなく、回数、時間帯、夜間対応の必要性などを確認します。
同じ医療処置でも、施設によって受け入れ可能な範囲は異なります。
夜間の看護対応が必要になった場合
介護付き有料老人ホームに看護職員がいるからといって、すべてのホームで24時間看護職員が常駐しているわけではありません。
夜間に継続的な医療処置や頻回な看護観察が必要になると、現在のホームでは対応できない場合があります。
要介護度が上がったときは、介護職員の体制だけでなく、看護職員の勤務時間や夜間の医療連携まで確認してください。
入院治療が必要になった場合
急性期治療や長期入院が必要になれば、一時的にホームを離れることがあります。
入院が長期化した場合の居室確保、費用、契約継続、退去条件についてはホームごとに契約内容が異なります。
要介護度が上がったことそのものではなく、病状と入院期間によって退去の相談が必要になることがあります。
認知症が進行した場合はどうなる?
要介護度の上昇と同時に、認知症の症状が変化することもあります。
認知症が進行したからといって、一律に介護付き有料老人ホームから退去するわけではありません。
必要な見守りに対応できるか確認する
認知症の状態が変わると、夜間の見守り、移動時の安全確認、不安や混乱への対応などが増えることがあります。
ホームが本人の状態に合わせたケアを継続できるかを確認します。
症状の背景に体調変化がないか確認する
急に落ち着かなくなった、夜眠れなくなった、介助を強く拒むようになったといった変化がある場合、認知症の進行だけでなく、痛み、感染症、便秘、脱水、薬の影響などが関係していることもあります。
単純に「認知症が重くなった」と判断せず、必要に応じて医療面も確認します。
介護度が上がると居室を移ることはある?
ホームによっては、本人の状態が変化したときに、一般居室から介護に適した居室へ移る仕組みを設けている場合があります。
有料老人ホームの標準指導指針でも、一定の要介護状態になった入居者が一般居室から介護居室などへ住み替える契約を想定し、その手続きを契約書や管理規程上で明確にしておくことが求められています。
住み替えの条件を契約書で確認する
入居時に「将来介護が重くなった場合は介護居室へ移る」という契約になっていることがあります。
その場合は、次の内容を確認してください。
- どのような状態になったら居室変更を検討するか
- 誰が状態を判断するか
- 本人・家族への説明はいつ行われるか
- 移動後の居室面積や設備
- 家賃・管理費などが変わるか
- 前払金の扱いが変わるか
本人の意思を確認せず一方的に変更するものではない
厚生労働省の標準指導指針では、要介護状態に伴う居室変更などについて、医師の意見や本人の意思、身元引受人等の意見を踏まえる手続きが想定されています。
居室変更の話が出た場合は、「契約上どの条件に該当したのか」「どのような手続きを経て変更するのか」を確認してください。
要介護度が上がったことを理由に契約解除される?
有料老人ホームでは、退去・契約解除の条件を入居契約書に定めます。
厚生労働省の標準指導指針では、ホーム側の契約解除条件について、入居者の権利を不当に狭めるものとならないよう求めています。
まず入居契約書の退去条件を確認する
ホームによっては、医療依存度が一定以上になった場合、長期入院となった場合などについて、退去協議の条件を定めていることがあります。
重要なのは、要介護度の数字だけでなく、契約上どのような状態が退去条件とされているかです。
口頭説明だけで判断しない
施設職員から「この状態では難しい」と言われた場合は、すぐに退去日を決めるのではなく、契約書・重要事項説明書のどの条項に該当するのかを確認してください。
また、現在のホームで継続できない理由が、介護面なのか、医療面なのか、設備面なのかを具体的に聞くことが大切です。
「要介護度が上がったから」という説明だけではなく、具体的に何が施設の対応範囲を超えているのかを確認しましょう。
介護度が上がったとき家族が確認すること
要介護認定の更新や区分変更で介護度が上がったら、家族は費用だけでなく、今後の生活をホームと確認しましょう。
CHECK|確認しておきたいポイント
確認したい項目
- 現在増えている介助は何か
- 今の職員体制で対応を続けられるか
- ケアプランはどのように変わるか
- 介護保険自己負担はいくら変わるか
- 追加で必要になる実費はあるか
- 医療処置が増えていないか
- 夜間の看護体制で対応できるか
- 居室変更の可能性があるか
- 長期入院時の契約・居室の扱い
- 看取りまで対応可能か
- どのような状態になると退去を相談するのか
「今は大丈夫」だけで終わらせない
現在は対応できても、今後さらに状態が変化する可能性があります。
そのため、「今の要介護度なら大丈夫ですか」だけでなく、「今後どのような状態になると対応が難しくなりますか」と聞くことが重要です。
医療面は具体的な処置名で確認する
「医療対応はできます」という説明だけでは不十分です。
本人に今後必要になる可能性がある処置について、対応時間帯、看護職員の勤務体制、訪問診療・協力医療機関との連携を確認してください。
退去の話が出たときは何を確認する?
要介護度が上がった後にホームから退去の相談を受けた場合は、理由と手続きを一つずつ確認します。
何が継続入居を難しくしているのか
まず、具体的な理由を聞きます。
- 介助量が施設体制を超えているのか
- 医療処置に対応できないのか
- 夜間の看護が必要なのか
- 入院が長期化しているのか
- 居室設備で安全を確保できないのか
理由が分かれば、現在のホームで対応方法を調整できるのか、別の生活場所を検討すべきなのかを考えやすくなります。
契約上の根拠を確認する
退去条件は、入居契約書や重要事項説明書で確認します。
ホームから説明を受けた内容と契約書の内容が一致しているかを確認してください。
すぐに次の施設を決めず、必要な条件を整理する
転居が必要になった場合も、単に空室がある施設へ移るのではなく、本人が今後必要とする介護・医療を継続できる施設を探す必要があります。
現在のホームから、本人に必要な介助、医療処置、夜間対応、認知症ケアなどを整理してもらうと、次の施設へ情報を引き継ぎやすくなります。
入居前に「重度化したらどうなるか」を確認しておく
介護付き有料老人ホームは長期間暮らす可能性があるため、現在の状態だけで選ぶと、将来の重度化でミスマッチが起こることがあります。
介護度の数字だけでなく、重度者に必要な介助を実際にどこまで提供しているか確認します。
介護職員・看護職員の勤務体制と、医療ニーズが増えた場合の対応を確認します。
一般居室から介護居室等へ移る可能性、費用、手続きを契約前に確認します。
現在だけでなく、持病の進行で必要になり得る医療についても確認します。
どこまで住み続けられるのかを重要事項説明書・入居契約書で確認します。
CONCLUSION
最後に、本文で確認した内容を本人の状況に置き換え、施設・担当者へ具体的に確認して判断しましょう。
まとめ|介護度が上がっても一律退去ではない。必要な介護・医療に対応できるかを確認する
介護付き有料老人ホームでは、要介護度が上がったことだけを理由に全国一律で退去しなければならないわけではありません。
特定施設入居者生活介護は要介護1〜5について介護報酬が設定されており、重度化した入居者への介護も制度上想定されています。
要介護度が上がったときは、ケアプランや介護保険自己負担、必要な介助内容などが変わります。
一方、継続入居を左右しやすいのは、介護度の数字そのものではなく、本人に必要な介護・医療がホームの対応範囲に収まっているかです。
特に、新しい医療処置、夜間の看護、認知症の状態変化、長期入院などがある場合は、今後も対応可能かを確認してください。
また、一定の要介護状態になったときに居室を変更する契約や、施設側から契約解除を申し出る条件が定められていることもあります。
入居中に状態が変化した場合は、「要介護度が上がったから退去ですか」と聞くだけではなく、何が変わり、ホームでは何に対応でき、どの条件に該当すると継続が難しくなるのかまで具体的に確認することが大切です。

