病院から介護医療院へ移るときは、退院日だけ決めて施設へ移動するのではありません。病院で受けている医療や看護、現在の身体状態、介護量、薬、食事形態などを整理し、介護医療院で継続できるかを確認しながら「退院調整」を進めます。
特に重要なのは、退院間近になってから介護医療院を探し始めないことです。医療依存度が高い人ほど、受入可能な施設の確認、診療情報の共有、本人・家族への説明、入所日の調整に時間が必要になることがあります。
まず結論|病院と介護医療院の情報共有を早めに始める
病院から介護医療院へ移るときは、①退院見込みを確認、②病院の退院支援担当者へ相談、③現在必要な医療・介護を整理、④候補となる介護医療院へ情報提供、⑤受入可否の確認、⑥本人・家族への説明と契約、⑦診療情報・薬・看護情報を引き継ぎ、⑧退院当日に移動、という流れで進めます。空床だけで決めず、現在必要な医療を介護医療院で継続できるかを最優先で確認することが大切です。
病院から介護医療院へ移る退院調整の流れ
介護医療院は、長期的な医療と介護の両方を必要とする要介護者が療養しながら生活するための介護保険施設です。
病院とは役割が異なるため、現在病院で受けている治療や処置を、そのまま同じ形で介護医療院へ持ち込めるとは限りません。
病院で必要だった医療をそのまま続けられるか確認する
退院調整では、病院側が現在の病状や治療内容を整理し、候補となる介護医療院へ情報を伝えます。
医療処置は「ある・ない」だけでなく頻度まで伝える
たとえば吸引、酸素療法、経管栄養、インスリン管理などが必要な場合は、処置名だけでなく、実施頻度、夜間対応の必要性、状態が変化したときの対応まで伝える必要があります。
同じ処置名でも必要な対応量によって、施設側の受入判断が変わることがあります。
専門的な治療が必要なら外部医療との連携も確認する
介護医療院で対応できない専門的治療や検査がある場合は、外部医療機関への受診や連携が必要になることがあります。
現在通院している専門科がある場合は、退院後も受診が必要か、どの医療機関で継続するかを退院前に整理しておきます。
まず病院の退院支援担当者へ相談する
病院から介護医療院への移行を考え始めたら、病棟の看護師や主治医だけでなく、病院の退院支援部門へ早めに相談します。
退院支援看護師・医療ソーシャルワーカーが関わる場合がある
病院によっては、入退院支援や地域連携を担当する看護師、社会福祉士である医療ソーシャルワーカー(MSW)などが、退院後の療養先調整に関わります。
「介護医療院を探したい」と具体的に伝える
退院先として介護医療院を希望している場合は、その意向を早めに伝えます。
病院側は、現在の病状、必要な医療・介護、本人の希望、家族の状況などを整理し、候補施設との調整に必要な情報をまとめます。
退院予定日は「確定日」と「見込み」を分けて確認する
治療中は退院日がまだ確定していない場合があります。
確定するまで何もしないのでは遅くなることがある
「○月上旬頃には退院できそう」といった見込みの段階でも、施設探しを始められる場合があります。
候補施設へは「退院予定日は未確定」と伝えたうえで、受入条件や必要書類だけ先に確認しておくと、その後の調整が進めやすくなります。
POINT
退院日が完全に決まるまで待つのではなく、退院の可能性が見えてきた時点で「何が整えば退院できるのか」と「介護医療院で継続すべき医療」を確認しておくことが重要です。
病院から介護医療院へ伝える情報を整理する
受入判断には、介護度だけでなく、医療・看護・介護の具体的な情報が必要です。
病状・治療内容
診断名だけでなく、現在の病状、治療経過、今後必要と見込まれる医療を整理します。
急性期治療が終了しているかも重要
介護医療院は急性期病院の代わりではありません。手術直後などで急性期治療の継続が必要な状態では、介護医療院への移行より病院での治療継続が優先されることがあります。
看護・医療処置
現在行っている処置を具体的に整理します。
- 酸素療法
- 喀痰吸引
- 経管栄養
- 尿道カテーテル管理
- 創傷・褥瘡処置
- 血糖測定やインスリン
- その他、継続が必要な処置
夜間対応の必要性まで共有する
「吸引あり」とだけ伝えるのではなく、日中のみか、夜間にも頻回に必要かを共有します。
施設の看護体制と合うかどうかを確認するために重要な情報です。
ADL・介護量
移動、移乗、食事、排せつ、入浴、着替えなどで、どの程度の介助が必要かを整理します。
病院内での状態を具体的に伝える
「要介護4」といった認定区分だけでは、実際の介護量は分かりません。
ベッドから車いすへ移るときに1人介助でよいのか、2人必要なのか、食事を自力摂取できるのかなど、現在の実際の状態を共有します。
認知症・意思疎通・行動面
認知症の有無だけでなく、意思疎通の方法、不安が強くなる場面、夜間の様子なども施設側の受入判断やケア準備に役立ちます。
候補の介護医療院へ受入可否を確認する
必要な情報が整理できたら、候補施設へ受入可能か確認します。
空床があってもすぐ入所できるとは限らない
介護医療院は、本人の病状や必要な医療を踏まえて受入可否を判断します。
「空きがあります」だけで決めない
ベッドに空きがあっても、本人に必要な医療処置へ対応できない場合は受け入れが難しいことがあります。
空床確認と同時に、現在の医療・介護条件を伝えて確認することが重要です。
診療情報提供書などを求められることがある
候補施設が受入可否を判断するため、病院から診療情報提供書や看護情報、リハビリ情報などの提出を求めることがあります。
全国共通の書類だけで決まるわけではない
申込みに必要な書類や書式、提出時期は施設ごとに異なります。
病院の退院支援担当者と施設の相談窓口で、誰が何を準備するかを確認してください。
注意:「診療情報提供書があれば必ず入所できる」という意味ではありません。書類は受入判断の材料の一つで、最終的には本人の状態と施設の受入体制を踏まえて判断されます。
本人・家族との面談や施設見学を進める
受入調整の途中で、介護医療院の担当者が本人・家族へ面談を行ったり、病院へ本人の状態を確認しに来たりする場合があります。
本人がどのような生活を希望しているか確認する
介護医療院は生活施設でもあるため、医療条件だけでなく、本人の生活上の希望も重要です。
家族だけで決められるとは限らない
本人が意思を伝えられる場合は、本人にも介護医療院への移行について説明し、希望を確認します。
本人の理解力や意思決定能力に応じて、病院・施設・家族で説明方法を調整します。
家族は見学で生活環境を確認する
時間が取れる場合は、入所前に施設を見学します。
見学で確認したいこと
- 本人が利用する予定の療養室
- 多床室の場合のプライバシー確保
- 食事・入浴・排せつの支援方法
- リハビリや日中活動
- 面会方法
- 夜間の看護・介護体制
- 急変時の対応
- 外部医療機関との連携
- 月額総費用
入所日が決まったら病院と施設で引継ぎを進める
受入が決まり入所日が決定したら、退院当日に必要な情報や薬が途切れないよう、病院と施設の間で引継ぎを行います。
診療情報・看護情報を最新状態にする
受入審査から退院日までの間に状態が変化することがあります。
審査後の変化も必ず伝える
新しい発熱、褥瘡の悪化、酸素開始、薬の変更などがあった場合は、入所前に介護医療院へ伝えます。
「一度受入許可が出たから」と情報更新を止めると、入所当日に施設側が想定していた状態と違うことがあります。
薬の引継ぎを確認する
退院時の薬については、薬剤情報と実際の薬の両方を確実に引き継ぎます。
次回診察まで薬が足りるか確認する
介護医療院へ移ると、診療の担当や処方の流れが変わることがあります。
退院時に何日分の薬を持参するのか、施設入所後の最初の診察・処方がいつかを、病院と施設の双方で確認してください。
食事・栄養・嚥下情報も共有する
食事形態、むせの有無、経管栄養、食事介助、栄養上の注意点なども引き継ぎます。
病院で安全に食べられていた食形態を施設側が把握できるよう、必要な情報を伝えます。
退院当日は誰が何をする?
退院当日は、本人の移動だけでなく、書類・薬・所持品を介護医療院へ確実に引き継ぎます。
移動方法を事前に決める
本人が座位を保てるか、車いす移動か、ストレッチャーが必要かなどによって移動手段が変わります。
家族の自家用車でよいとは限らない
医療的な見守りや寝た状態での移動が必要な場合は、介護タクシーや民間救急などを検討することがあります。
誰が手配し、費用を誰が負担するかを入所日前に確認してください。
持参する書類・薬を確認する
退院当日に確認したいもの
- 介護保険被保険者証
- 介護保険負担割合証
- 医療保険の資格確認に必要なもの
- 診療情報提供書など施設指定の医療書類
- 看護サマリー等の退院時情報
- 薬剤情報・お薬手帳
- 退院時処方薬
- 施設から指定された契約関係書類
- 衣類・日用品などの生活用品
病院から直接渡すものと家族が持参するものを分ける
診療情報などは病院から施設へ直接送付される場合もあります。
「家族が持っていると思った」「病院から届くと思った」という抜けを防ぐため、前日までに受渡方法を確認してください。
退院調整で家族がつまずきやすいポイント
退院日だけを先に決めてしまう
退院日が迫ってから施設を探すと、医療情報の確認や受入審査が間に合わない可能性があります。
退院見込みの段階から動く
主治医から「治療が落ち着けば退院」と言われた時点で、退院支援担当者へ相談してください。
病名だけで受入可能と思い込む
施設側が知りたいのは診断名だけではありません。
処置・頻度・夜間対応を具体化する
本人の医療ニーズを具体化すると、受入可能な施設を絞り込みやすくなります。
受入決定後の状態変化を伝えない
退院前に状態が変わった場合、入所できる条件そのものが変わることがあります。
変化があれば病院から施設へ再共有する
薬、処置、ADL、食事形態などに変更があれば、最新情報に更新してください。
退院調整中に家族が確認したい順番
主治医に、治療上何が整えば退院可能か、時期の見込みを確認します。
処置、薬、専門外来、夜間対応まで整理します。
空床だけでなく、現在の医療・介護条件に対応できるか確認します。
病院が準備するもの、家族が準備するものを分けます。
施設受入日、病院退院時刻、移送方法を合わせます。
退院当日に必要な薬と最新の医療情報が途切れないよう確認します。
まとめ|病院と介護医療院を「情報」でつなぐことが退院調整の中心
病院から介護医療院へ移るときの退院調整では、退院日を決めること以上に、現在の医療・看護・介護情報を介護医療院へ正確に引き継ぐことが重要です。
病院の退院支援担当者へ早めに相談し、病状、処置、薬、ADL、認知症、食事、夜間対応などを整理したうえで、候補施設が実際に対応できるかを確認します。
家族が特に確認したい3点
- 病院で行っている医療を介護医療院でどこまで継続できるか
- 退院までに病院・施設・家族がそれぞれ何を準備するか
- 入所当日に診療情報・薬・看護情報が途切れず引き継がれるか
「空きがある介護医療院」を探すだけではなく、本人が退院後も必要な医療と介護を継続できる介護医療院かを確認しながら、病院と施設の双方で退院調整を進めましょう。
