養護老人ホームを検討するとき、「毎月いくらかかるのか」「年金が少なくても入所できるのか」は大きな不安になりやすい点です。
養護老人ホームの費用は、民間の有料老人ホームのように「月額○万円」と一律に決まっているわけではありません。本人の収入や必要経費、扶養義務者の状況などをもとに、市区町村が費用徴収額を決める仕組みです。
そのため、同じ養護老人ホームに入所していても、本人ごとに負担額が異なる場合があります。
まず結論|養護老人ホームの利用料は一律ではない
養護老人ホームは市区町村の措置によって入所する施設で、本人が負担する費用は、前年の収入から税金・社会保険料・医療費などの必要経費を差し引いた「対象収入」などをもとに決められます。所得が少ない人では負担が0円となる場合もありますが、実際の徴収額や上限、扶養義務者の負担は自治体の基準によって確認する必要があります。
養護老人ホームの費用は「措置費」と「費用徴収」で成り立つ
養護老人ホームは、原則として65歳以上で、環境上・経済的な理由により自宅で養護を受けながら生活することが難しい人を、市区町村の判断で入所させる施設です。
一般的な有料老人ホームのように、本人が施設と直接契約して家賃や管理費を支払う仕組みとは異なります。
施設の運営に必要な費用は、市区町村が「措置費」として支弁し、そのうち本人や扶養義務者に負担能力がある場合は、老人福祉法に基づいて費用の全部または一部を徴収します。これが、養護老人ホームの費用を理解するときの基本です。
POINT
養護老人ホームでは「施設が決めた月額利用料を払う」のではなく、市区町村が本人などの負担能力を確認して費用徴収額を決めます。
本人の負担額は「対象収入」をもとに決まる
本人の費用徴収額を決める際には、単純な年金の受取額だけを見るわけではありません。
国の費用徴収基準の考え方では、原則として前年の収入から、租税、社会保険料、医療費などの必要経費を差し引いた後の金額を「対象収入」として扱います。
年金などの収入がそのまま負担額になるわけではない
たとえば、老齢年金などの定期的な収入は、原則として収入として認定されます。
一方で、その収入額がそのまま施設費になるわけではありません。税金や社会保険料、医療費など一定の必要経費を差し引いたうえで対象収入を算定し、その金額をもとに費用徴収額を決めます。
したがって、同じ年金額の人でも、医療費などの必要経費の状況によって、対象収入や負担額が異なることがあります。
必要経費として考慮されるものがある
必要経費として扱われる代表的なものには、所得税・住民税などの租税、社会保険料、医療費などがあります。
そのほか、一定の条件のもとで、親族への仕送り、災害による支出、やむを得ない事情による借金の返済、補装具などの購入費が考慮される場合があります。
ただし、何でも自由に必要経費として控除できるわけではありません。実際にどの支出が対象になるかは、市区町村へ資料を提出して確認する必要があります。
「手元に残るお金=対象収入」ではない
費用徴収で使う対象収入には一定の算定ルールがあります。日常的な交際費や任意の支出など、本人が必要だと考えている支出がすべて必要経費として認められるわけではありません。
養護老人ホームの利用料はいくらになるのか
結論として、全国共通で「月額○万円」と答えることはできません。
多くの自治体では、本人の対象収入を複数の階層に分け、それぞれに月額の費用徴収額を設定しています。対象収入が少ない階層では負担が0円になる基準を設けている自治体もあります。
一方、対象収入が増えれば、それに応じて費用徴収額も上がります。また、一定額を上限とする仕組みや、入所した月・退所した月を日割りにする仕組みなどが設けられている場合があります。
自治体の費用徴収表で確認する
実際の金額を知りたい場合は、本人が措置を受ける市区町村の「老人ホーム費用徴収基準」「老人福祉法施行細則」「養護老人ホーム費用徴収月額表」などを確認します。
たとえば、自治体によっては、本人の対象収入が一定額以下なら費用徴収月額を0円とし、その後は対象収入の増加に応じて段階的に負担額を設定しています。
ただし、この階層区分や上限額を全国共通の料金表として使うことはできません。制度の運用や徴収基準は自治体の規則等で定められているため、最終的な金額は必ず市区町村に確認してください。
扶養義務者にも費用負担が生じることがある
養護老人ホームの費用徴収では、本人だけでなく、扶養義務者についても負担額が設定される場合があります。
国の費用徴収基準では、主たる扶養義務者について、生活保護の受給状況や住民税・所得税などをもとに階層を分けて費用徴収額を算定する考え方が示されてきました。
家族が必ず高額な費用を負担するわけではない
扶養義務者がいるからといって、必ず高額な負担が発生するとは限りません。
自治体の基準では、生活保護受給者や市町村民税非課税者などについて費用徴収額を0円とする区分を設けている例があります。また、本人分の徴収額や措置費の支弁額との関係で、扶養義務者から徴収できる額には制限があります。
病気、失業、災害、収入の大幅な減少などで支払いが難しい場合に、徴収額の全部または一部を減免できる制度を設けている自治体もあります。
CHECK
本人だけでなく家族の負担が心配な場合は、入所相談の段階で「本人負担」と「扶養義務者負担」を分けて確認します。
生活保護を受給している場合の費用
生活保護を受給している人も、要件を満たせば養護老人ホームへの措置入所の対象になることがあります。
費用徴収基準では、所得や保護の状況に応じて本人または扶養義務者の負担額を決めるため、生活保護受給者について費用徴収額が0円となる区分を設けている自治体もあります。
ただし、「生活保護を受けていれば養護老人ホームの費用は全国どこでも必ず0円」と一律に説明するのは適切ではありません。
生活保護の扶助内容、本人の収入認定、施設生活で必要になる日用品等の扱いなどは個別に確認する必要があります。入所措置を担当する市区町村と、生活保護を担当する福祉事務所の双方へ確認すると安心です。
施設で別に必要になるお金はあるのか
市区町村から決定された費用徴収額だけを見れば、入所後に必要となるすべての支出が分かるわけではありません。
本人の生活状況によっては、医療費、薬代、日用品、理美容、衣類、嗜好品、外出時の費用などが必要になる場合があります。
何が措置費に含まれ、何が本人の実費になるかは施設や自治体の扱いによって異なります。
入所前に「費用徴収額以外の実費」を確認する
実際に必要な月額を把握するには、市区町村から示される費用徴収額だけでなく、施設生活で本人が別に支払う費用も確認します。
特に、通院が多い人、薬が多い人、紙おむつなどの消耗品を多く使う人、理美容や外出の機会が多い人では、個人負担となる費用が積み重なることがあります。
01
本人の費用徴収月額を確認する
前年の収入、税金、社会保険料、医療費などをもとに、市区町村が算定した本人負担額を確認します。
03
施設で別途必要になる実費を確認する
医療費、薬代、日用品、衣類、理美容、外出費など、費用徴収額とは別に本人が負担する可能性のある項目を確認します。
収入が変わった場合は負担額も変わることがある
費用徴収額は、原則として前年の収入などをもとに算定しますが、収入や必要経費が大きく変わった場合には負担能力も変化します。
国の費用徴収基準の取扱いでは、前年に比べて収入が減少した場合や、やむを得ない支出が発生したことにより負担能力が著しく変化した場合、当年の収入や必要経費を用いて対象収入を算定できる考え方も示されています。
年金額の変化、大きな医療費、失業など家族側の事情が変わった場合は、そのままにせず、市区町村の担当窓口へ相談してください。
養護老人ホームの費用を確認するときの相談先
養護老人ホームは、市区町村による措置制度です。そのため、費用を正確に知りたいときは、施設へ料金だけを問い合わせるより、本人が住んでいる市区町村の高齢者福祉担当窓口へ相談することが重要です。
相談時に確認したいこと
- 本人の費用徴収月額はいくらになるか
- 算定に使う「対象収入」はいくらか
- 必要経費として認められる支出は何か
- 扶養義務者の費用負担があるか
- 減額・免除の制度があるか
- 施設生活で別に必要な実費は何か
- 収入や家族状況が変わった場合の手続きはどうするか
年金額が分かる書類、税金や社会保険料の資料、医療費の領収書などを用意して相談すると、負担額の見通しを確認しやすくなります。
まとめ|養護老人ホームは本人の負担能力に応じて費用が決まる
養護老人ホームの費用は、一般的な老人ホームのように全国共通の月額料金が設定されているわけではありません。
市区町村が措置に必要な費用を支弁し、そのうち本人や扶養義務者に負担能力がある場合に、収入や課税状況などに応じた費用が徴収されます。
本人については、前年の収入から税金・社会保険料・医療費などの必要経費を差し引いた対象収入が重要な判断材料になります。
そのため、「年金が少ないから入所できない」「養護老人ホームは一律で月○万円」と考えるのではなく、まず市区町村へ相談し、本人負担・扶養義務者負担・別途実費の3つを分けて確認することが大切です。

