褥瘡があると、「老人ホームには入れないのでは?」「傷の処置が必要なら病院や医療施設でないと難しい?」と心配になることがあります。
実際には、褥瘡があっても入居できる老人ホームはあります。ただし、受入可否は「褥瘡があるか・ないか」だけでは決まりません。
傷の深さや大きさ、感染の有無、必要な処置、体位変換の頻度、エアマット等の体圧分散用具、栄養状態、看護職員の配置、訪問診療・訪問看護との連携などによって必要な体制は変わります。
そのため施設探しでは、褥瘡の状態と現在行っている処置を正確に伝え、そのケアを施設で継続できるかを具体的に確認することが重要です。
まず結論|褥瘡の「有無」ではなく、処置内容と予防体制で施設を選ぶ
褥瘡があっても老人ホームへ入居できる可能性はあります。ただし、創部処置の頻度、感染の有無、体位変換、体圧分散寝具、栄養管理、排泄・スキンケア、看護職員の配置など、本人に必要なケアを継続できるかを確認する必要があります。施設へ問い合わせるときは「褥瘡があります」だけでなく、部位・大きさ・深さ・処置方法・使用しているマットレス・体位変換の必要性・主治医や訪問看護の関与まで伝えてください。
褥瘡があっても老人ホームに入れる?
褥瘡があることだけを理由に、すべての老人ホームへ入れないわけではありません。
受入可能な施設はある
看護職員が配置され、創部の観察や処置、体位変換、体圧分散寝具の利用などに対応できる施設では、褥瘡がある人を受け入れている場合があります。
褥瘡の状態で受入可否は変わる
皮膚の発赤程度なのか、皮膚欠損があるのか、深い組織まで及んでいるのか、感染兆候があるのかによって必要な医療・看護は異なります。
施設種別だけでは判断できない
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サ高住など、同じ種別でも看護職員の配置や医療連携は施設ごとに異なります。
POINT
「褥瘡対応可」という表示だけで決めず、現在の処置を誰が・何時に・どの頻度で行うかまで確認してください。
施設へ最初に伝えるべき褥瘡の情報
候補施設へ問い合わせる前に、現在の状態を整理しておくと受入判断が進みやすくなります。
施設へ共有したい内容
- 褥瘡がある部位
- 大きさ・深さ
- 滲出液の量
- 感染の有無
- 現在行っている処置
- 処置の頻度
- 使用している外用薬・被覆材
- 体位変換の必要性と頻度
- 使用しているマットレス・クッション
- 食事摂取量・栄養状態
- 失禁の有無
- 主治医・訪問看護の関与
褥瘡の深さ・重症度を確認する
施設側は、褥瘡の重症度によって必要な看護・医療体制を判断します。
「傷があります」だけでは不十分
褥瘡は、皮膚の発赤から深い組織損傷まで状態がさまざまです。
主治医・看護師から説明を受けている評価内容があれば、その情報を候補施設へ共有します。
写真だけで自己判断しない
傷の見た目だけで重症度や感染を家族が判断するのは難しいため、医師や看護師による評価をもとに伝えてください。
最近悪化している場合は必ず伝える
大きくなっている、滲出液が増えている、悪臭がある、発熱があるなど変化がある場合は、施設探しより先に医療的な評価が必要になることがあります。
創部処置を誰が行うか確認する
褥瘡がある人では、創部の観察と処置を継続できるかが重要です。
看護職員が処置する場合
施設内の看護職員が、医師の指示に基づいて処置する施設があります。
訪問看護を利用する場合
住宅型有料老人ホームやサ高住などでは、外部の訪問看護と連携して処置する場合があります。
処置時間と配置時間を照合する
毎日処置が必要でも、看護職員がその時間帯に勤務していなければ対応できないことがあります。
「看護師がいますか」ではなく、「この処置を毎日この時間に継続できますか」と確認してください。
体位変換への対応を確認する
褥瘡予防・悪化防止では、長時間同じ部位に圧がかかり続けないようにすることが重要です。
自分で寝返りできるか
自力で体位を変えられる人と、全面介助が必要な人では必要なケアが異なります。
必要な間隔は本人ごとに違う
日本褥瘡学会は、基本的には長時間同じ部位を圧迫しないよう定期的な体位変換を行い、体圧分散寝具や本人の状態によって間隔を調整する考え方を示しています。
一律に「必ず2時間ごと」と決めつけず、主治医・看護師等の指示や使用している寝具を踏まえて施設へ確認します。
夜間も対応できるか
日中だけ体位変換できても、夜間に長時間同じ姿勢になると意味がありません。
本人が夜間も介助を必要とする場合、夜勤者が実際に対応できるか確認してください。
体圧分散寝具を使えるか確認する
褥瘡ケアでは、マットレスやクッションなどの体圧分散用具も重要です。
現在使っている寝具を持ち込めるか
エアマットレス等を自宅・病院で使用している場合、同じ物を施設へ持ち込めるか確認します。
施設で用意できるか
施設所有の体圧分散マットレスを利用できる場合があります。
本人の状態に合う物か確認する
日本褥瘡学会は、体圧分散寝具について、自力でどの程度体位変換できるか、骨の突出、褥瘡発生リスクなどを考慮して選択することを示しています。
「エアマットがあるから安心」ではなく、本人に合っているか看護職員等へ確認してください。
栄養管理も褥瘡ケアの重要なポイント
褥瘡は傷だけ処置すればよいわけではありません。
低栄養があると治りにくくなる
日本褥瘡学会は、褥瘡予防の栄養管理では低栄養状態を避け、改善することを基本としています。
食事摂取量を確認する
本人がどの程度食べられているか、体重が減っていないかを確認します。
管理栄養士との連携を確認する
必要に応じて食事内容や栄養補助食品について相談できるか確認します。
持病との両立が必要
糖尿病、腎疾患、心不全などがある場合は、褥瘡だけを理由に家族判断で高カロリー・高蛋白にするのではなく、主治医や管理栄養士と相談します。
排泄・失禁ケアを確認する
尿や便によって皮膚が湿った状態が続くと、皮膚トラブルの原因になります。
失禁後に早く対応できるか
オムツ交換の時間が固定されているだけでなく、排泄後の状態に応じて交換できるか確認します。
皮膚を清潔に保てるか
排泄物による刺激を減らし、必要なスキンケアを行えるか確認します。
褥瘡部位と排泄物が近い場合は特に注意する
仙骨部・臀部周辺の褥瘡では、排泄物による汚染を防ぐケアが重要になります。
看護師の配置時間を確認する
褥瘡がある人では、看護職員の配置が重要な判断材料です。
日中だけか24時間か
看護師が配置されていても、日中のみ勤務し夜間は不在という施設があります。
夜間処置が本当に必要か主治医へ確認する
褥瘡があるから必ず24時間看護師常駐施設が必要とは限りません。
処置内容や全身状態を踏まえて、どの程度の看護体制が必要か主治医・看護師へ確認します。
オンコール体制も聞く
夜間に出血、発熱、強い痛みなどが起きた場合、誰が看護職員へ連絡し、どのように受診判断をするか確認します。
感染兆候への対応を確認する
褥瘡に感染が疑われる場合は、施設だけで様子を見るのではなく医療機関への相談が必要になることがあります。
発熱
褥瘡以外の感染症も含め、発熱時に誰が状態を確認するか聞きます。
発赤・腫れ・熱感
創周囲の皮膚変化を看護職員が観察できるか確認します。
滲出液・悪臭の変化
排液量の増加や性状の変化を記録し、必要時に医師へ報告できる体制が重要です。
感染が疑われる褥瘡は入居可否より治療を優先する
発熱、急な悪化、強い痛み、悪臭、創周囲の強い発赤などがある場合は、施設探しだけで対応せず、医師・看護師へ早めに相談してください。
糖尿病がある場合は血糖管理も確認する
糖尿病は褥瘡の治癒や感染リスクに関係することがあります。
血糖管理を継続できるか
内服薬、インスリン、血糖測定など現在の治療を施設で継続できるか確認します。
食事・創傷・血糖を別々に考えない
低栄養を改善する必要があっても、糖尿病治療との調整が必要です。
足病変も確認する
褥瘡とは別に糖尿病性足病変がある場合は、必要な観察・受診を施設へ伝えます。
褥瘡がある人の入浴はどうする?
褥瘡があっても、状態に応じて入浴・清潔保持を行うことがあります。
創部の状態で方法が変わる
通常入浴、シャワー浴、清拭など、本人の状態や医師・看護師の指示に応じて方法を決めます。
入浴後の処置ができるか確認する
入浴によって被覆材を交換する必要がある場合、看護職員の勤務時間と合うか確認します。
機械浴等が必要か確認する
座位保持が難しい、全介助が必要などの場合は、本人の身体状況に合う入浴設備があるか確認してください。
住宅型有料老人ホーム・サ高住では訪問看護も確認する
住宅型有料老人ホームやサ高住では、外部サービスを組み合わせて生活する場合があります。
訪問看護を利用できるか
創部処置や状態観察を訪問看護で行える場合があります。
必要な頻度で訪問できるか
訪問看護が利用できるというだけでなく、本人に必要な処置頻度で利用できるか確認します。
訪問時間外は誰が観察するか
訪問看護がいない時間帯に、施設職員がどのような変化を見て誰へ連絡するのかも重要です。
訪問診療・皮膚科等との連携を確認する
褥瘡が長引いている場合や状態が変化しやすい場合は、医師による継続的な評価が重要です。
施設の訪問診療医が診られるか
褥瘡の状態を定期的に確認し、必要な処置指示を出せるか聞きます。
専門医受診が必要な場合
皮膚科、形成外科等への受診を主治医から指示されている場合、通院方法を確認します。
急な悪化時の受診先
夜間・休日を含め、どのような状態で医療機関へ連絡・搬送するか確認します。
介護職員と看護職員の役割分担を見る
褥瘡ケアは看護師だけで完結するものではありません。
介護職員
体位変換、排泄介助、食事摂取量の把握、日常の皮膚変化の発見など、生活の中で重要な役割があります。
看護職員
創部の観察、医師の指示に基づく処置、感染兆候の評価、医師への報告などを担います。
情報共有ができるか
介護職員が見つけた「赤みが増えた」「食事量が減った」といった変化を、看護職員へすぐ共有できる体制か確認します。
夜間の体位変換・排泄介助を確認する
日中の看護体制が良くても、夜間のケアが不足すると褥瘡が悪化する可能性があります。
夜勤者数を聞く
何人の入居者を何人で見ているか、本人のフロア単位で確認します。
必要な体位変換を実施できるか
本人のケア計画どおりに夜間も体位変換できるか確認します。
失禁時に対応できるか
夜間に排泄物で皮膚が長時間湿ったままにならないよう、どのように観察しているかを聞きます。
入居後に褥瘡が悪化した場合の対応を確認する
入居時に状態が安定していても、その後悪化することがあります。
施設内で処置を継続できる範囲
創が深くなった、処置頻度が増えた場合でも対応できるか確認します。
受診・入院の基準
どのような状態で専門医受診や入院を検討するのか聞きます。
退院後に戻れるか
褥瘡治療で入院し、退院後に処置内容が増えた場合でも再入居・継続入居できるか確認します。
施設見学で確認したいポイント
01
看護職員の配置
日中・夜間の配置と、処置可能な時間帯を確認します。
02
体圧分散寝具
エアマット等の用意・持込み・選定方法を確認します。
03
体位変換
本人に必要な頻度で日中・夜間とも対応できるか確認します。
04
排泄・スキンケア
失禁時の対応、皮膚観察、清潔保持の方法を確認します。
05
栄養管理
食事摂取量、体重、管理栄養士との連携を確認します。
施設へそのまま聞ける質問
褥瘡対応の確認項目
- 現在この状態の褥瘡があっても入居できますか
- 創部処置は誰が行いますか
- 毎日の処置に対応できますか
- 看護職員は何時から何時までいますか
- 夜間に創部の異常があった場合はどう対応しますか
- 必要な体位変換を夜間もできますか
- エアマットを持ち込めますか
- 施設で体圧分散寝具を用意できますか
- 失禁後のスキンケアはどのように行いますか
- 管理栄養士へ相談できますか
- 訪問看護を併用できますか
- 褥瘡が悪化した場合はどこへ受診しますか
- 褥瘡治療で入院した後も戻れますか
主治医・看護師へ入居前に確認したいこと
医療職へ確認したい内容
- 現在の褥瘡の状態・重症度
- 今後必要な処置
- 処置の頻度
- 使用する外用薬・被覆材
- 体位変換の方法・頻度
- 必要な体圧分散寝具
- 入浴・シャワーの注意点
- 栄養面での注意点
- 受診が必要になる悪化サイン
- 訪問診療・訪問看護で対応可能か
施設へ提出する医療情報を準備する
施設が受入可否を判断するため、最新の情報を共有します。
診療情報提供書
褥瘡の状態、既往歴、治療内容、必要な処置などを新しい医療機関・施設へ伝えるために使われることがあります。
看護サマリー
体位変換、排泄、食事、現在の創処置など、日常ケアの情報を引き継ぐために役立ちます。
処置内容が分かる資料
現在使っている被覆材・外用薬・処置頻度が分かる情報を用意します。
直近の状態変化も伝える
入居審査後に褥瘡が悪化・改善した場合は、最新の状態を施設へ伝えてください。
褥瘡だけで施設を選ばない
褥瘡対応は重要ですが、老人ホームは長く生活する場所です。
介護全体
移乗、排泄、入浴、食事、認知症など、褥瘡以外の介護ニーズにも対応できるか確認します。
医療全体
糖尿病、心不全、腎疾患など、褥瘡の治療や栄養管理に影響する病気も含めて対応を確認します。
費用
施設利用料だけでなく、訪問看護、訪問診療、医療材料、通院付き添い等の費用も確認します。
本人の生活環境
長時間ベッド上で過ごす人ほど、居室環境、職員の声かけ、家族の面会しやすさも重要になります。
まとめ|褥瘡の状態と必要なケアを具体的に伝えて探す
褥瘡があっても、本人に必要な創部処置、体位変換、体圧分散、栄養管理、スキンケア、医療連携を継続できる施設であれば入居できる可能性があります。
日本褥瘡学会も、褥瘡予防では長時間の圧迫を避ける体位変換、体圧分散寝具、低栄養の回避・改善、スキンケアが重要としています。
施設探しでは、「褥瘡対応可」という表示だけでなく、誰が創部を観察・処置するのか、夜間も必要な体位変換ができるのか、体圧分散寝具を使えるのか、栄養状態を確認できるのかまで具体的に確認してください。
最も重要なのは、「褥瘡がある人を受け入れた実績」ではなく、「本人の現在の褥瘡ケアを毎日継続し、悪化時にすぐ医療へつなげられる施設か」を確認することです。
入居前には主治医・看護師から最新の褥瘡状態と処置内容を確認し、候補施設へ正確に共有したうえで受入可否を判断してもらいましょう。