介護医療院を検討するとき、「医師は何人いるのか」「病院のように24時間医師がいるのか」「夜間に急変したらすぐ診てもらえるのか」と、医師の配置体制が気になることがあります。
介護医療院は、長期療養のための医療と介護を一体的に提供する介護保険施設です。そのため医師の配置基準が設けられており、施設の類型や入所者数に応じて必要な医師数が定められています。
結論|介護医療院には医師配置基準があるが、「24時間ずっと医師が施設内にいる」とは限らない
介護医療院の医師配置は、法令上、Ⅰ型入所者数÷48とⅡ型入所者数÷100を合計した数以上を常勤換算で配置するのが基本で、その計算結果が3未満の場合は原則3人以上として扱います。ただし、一定の要件を満たして医師の宿直を置かない場合や、医療機関併設型・併設型小規模介護医療院などには別の扱いがあります。そのため『Ⅰ型は48対1、Ⅱ型は100対1』だけで判断せず、施設の類型、実際の常勤・非常勤医数、日中の診療体制、夜間の宿直・連絡体制、急変時に誰が診察するかまで確認することが重要です。
最初に確認する3点
- 施設類型ごとの法定配置計算を確認する
- 常勤・非常勤を含む実際の医師体制を見る
- 夜間の宿直・連絡・急変時診療を確認する
介護医療院の医師配置基準はどうなっている?
介護医療院の医師配置は、Ⅰ型療養床とⅡ型療養床で基準が異なります。
| 確認項目 | 法令上の基本 |
|---|---|
| 医師の常勤換算数 | Ⅰ型入所者数÷48+Ⅱ型入所者数÷100以上 |
| 最低人数 | 上記計算結果が3未満なら原則3人以上 |
Ⅰ型・Ⅱ型が混在する施設では、類型ごとの人数を合算して必要数を計算します。
Ⅰ型は医療ニーズが高い人を想定した配置
Ⅰ型療養床は、主として長期療養が必要で、重篤な身体疾患がある人や、身体合併症を有する認知症高齢者などを受け入れることを想定しています。
そのため、Ⅱ型より手厚い医師配置基準が設定されています。
Ⅱ型は100人に1人以上が基本
Ⅱ型療養床の部分は、入所者数を100で除した数を医師配置の計算に用います。
ただし、実際の法令ではⅠ型・Ⅱ型の入所者数を組み合わせて常勤換算数を計算する仕組みがあり、施設形態や宿直体制による例外もあります。
「48人に1人」=常に48人ごとに医師1人が診療しているという意味ではない
配置基準は常勤換算による人員基準です。常勤医だけでなく、勤務時間を換算した医師数で基準を満たす場合があります。実際の勤務人数や診療時間を知りたい場合は、施設の重要事項説明書や介護サービス情報公表システムで確認してください。
Ⅰ型とⅡ型で医師配置が違う理由
介護医療院にはⅠ型とⅡ型があり、想定する入所者の医療ニーズが異なります。
Ⅰ型は重い身体疾患・医療ニーズへの対応を想定
Ⅰ型療養床は、重篤な身体疾患を有する人や、身体合併症のある認知症高齢者など、より医療ニーズの高い人を受け入れることを想定した類型です。
そのため、医師だけでなく薬剤師や介護職員についても、Ⅱ型と異なる人員基準が設けられています。
Ⅱ型も医師がいない施設ではない
Ⅱ型はⅠ型より医師配置基準が少ないからといって、「医療をほとんど提供しない施設」という意味ではありません。
介護医療院である以上、医師が入所者の病状を把握し、診察、投薬、注射、処置などを病状に応じて適切に行うことが求められています。
介護医療院の医師はどんな役割を担う?
介護医療院の医師は、単に施設へ「配置されている」だけではありません。入所者の長期療養を医学面から支える役割があります。
日常的な診察と病状管理
医師は入所者の心身の状態や病状を把握し、必要な診察を行います。
慢性疾患の管理、体調変化の評価、薬の調整など、長期療養を続けるための医学的な管理を行います。
投薬・注射・処置の判断
厚生労働省の運営基準では、検査、投薬、注射、処置などについて、入所者の病状に照らして妥当かつ適切に行うこととされています。
そのため、入所前と同じ薬をそのまま続けるとは限らず、施設医師が本人の状態を確認して処方内容を見直すこともあります。
リハビリや介護への医学的な助言
リハビリをどの程度行えるか、身体への負担はないか、食事形態や活動量をどうするかなど、多職種がケアを行う際にも医師の医学的判断が関わります。
終末期・看取りの判断
介護医療院では看取りやターミナルケアも役割の一つです。人生の最終段階では、本人・家族の意思を尊重しながら、医師が病状や今後の見通しを説明し、多職種と医療・ケア方針を検討します。
夜間も医師は介護医療院にいる?
介護医療院では、原則として医師を宿直させることが運営基準で定められています。
ただし、一定の条件を満たし、入所者へのサービス提供に支障がない場合は、医師の宿直を置かないことが認められています。
原則は医師の宿直
厚生労働省の介護医療院運営基準では、管理者は介護医療院に医師を宿直させなければならないとされています。
そのため、介護医療院は一般的な高齢者住宅などと比べ、夜間の医療対応を想定した制度設計になっています。
宿直を置かなくてもよい例外がある
一方、一定の条件では宿直医を置かないことが可能です。
- Ⅱ型療養床のみを有する場合
- 急変時に併設病院・診療所の医師が速やかに診察できる体制がある場合
- 急変時に医師が速やかに診察できる体制があり、都道府県知事に認められている場合
重要
「医師配置あり」と書かれていても、それだけでは夜間に医師が施設内へ宿直しているかは分かりません。夜間の宿直医がいるのか、併設病院の医師が対応するのか、オンコール等で速やかに診察する体制なのかまで確認してください。
夜間に急変したときはどうなる?
夜間に発熱、呼吸状態の悪化、意識障害、出血などが起きた場合、看護職員が状態を確認し、施設の体制に応じて医師へ連絡します。
施設医師が対応できる場合
宿直医がいる場合や、医師が速やかに診察できる体制がある場合は、本人の状態を確認して必要な指示・処置を行います。
施設内で必要な医療を提供できない場合
介護医療院の医師が、本人の病状からみて施設内で必要な医療を提供することが難しいと判断した場合には、協力医療機関などへの入院や、他の医師へ診療を求めるなど適切な措置を取ることが運営基準で定められています。
医師がいる施設でも、すべての治療を施設内で完結できるわけではない
手術、高度な検査、急性期病院での継続治療などが必要な場合は、病院へ搬送・入院することがあります。介護医療院の医師配置は「病院とまったく同じ医療を提供する」という意味ではありません。
医療機関併設型では医師配置の考え方が異なる
介護医療院には、病院や診療所に併設されている「医療機関併設型」があります。
併設医療機関の医師と連携できる
医療機関併設型介護医療院では、Ⅰ型入所者数を48で除した数とⅡ型入所者数を100で除した数を合計した数以上の医師を配置する基準があります。
単独型とは最低人数の扱いが異なるため、単純に「Ⅰ型だから必ず施設専属の医師が3人」とは限りません。
19人以下の併設型小規模介護医療院には例外がある
入所定員19人以下の併設型小規模介護医療院では、併設病院・診療所の医師によって入所者の処遇を適切に行えると認められる場合、介護医療院側に医師を別に置かなくてもよい場合があります。
この場合も「医師がいないから医療対応がない」という意味ではなく、併設医療機関との一体的な体制で診療を行う仕組みです。
「医師3人」と書いてあっても実際の診療体制は別に確認する
人員基準の数字だけでは、本人が必要な医療をどのように受けられるかまでは分かりません。
常勤医と非常勤医の内訳
医師数は常勤換算で表示されることがあります。常勤医が何人いるのか、非常勤医はどの曜日・時間帯に勤務するのかを確認します。
診療科
本人に心疾患、糖尿病、神経疾患、精神疾患などがある場合、施設医師の専門分野だけで対応できるとは限りません。
必要に応じて外部の専門医療機関へ受診できるか、協力医療機関との連携体制を確認します。
夜間の診察方法
宿直医が施設内にいるのか、併設病院から来るのか、速やかに呼び出す体制なのかによって、夜間対応の実際は異なります。
休日の体制
平日だけでなく、土日祝日や年末年始に医師がどのように対応するかも確認しておくと安心です。
入所前に医師配置について確認したい7項目
医師配置を確認するときは、「医師は何人いますか?」だけで終わらせず、本人が必要な医療を受けられるかまで確認します。
01
Ⅰ型・Ⅱ型のどちらですか?
施設の類型によって医師配置基準が異なります。混合型の場合は、どのような体制か説明してもらいます。
02
常勤医は何人いますか?
常勤換算の人数だけでなく、実際の常勤医・非常勤医の内訳を確認します。
03
日中はいつ診察を受けられますか?
定期診察の方法、体調変化があった場合の診察方法を確認します。
04
夜間は医師が施設内に宿直していますか?
宿直医がいない場合は、急変時に誰へ連絡し、どの程度の時間で診察につなげる体制かを確認します。
05
本人の持病に対応できますか?
診断名だけでなく、必要な薬、検査、処置、通院の頻度まで伝えて確認します。
06
協力医療機関はどこですか?
施設内では対応できない場合の入院先や専門医受診の連携体制を確認します。
07
急変時・看取り時の方針はどうなっていますか?
救急搬送、施設内での診療、本人・家族への説明など、状態が悪化した場合の対応を確認します。
医師配置は介護サービス情報公表システムでも確認できる
施設の医師数や職員体制を比較したい場合は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」を確認する方法があります。
職員数と勤務形態を見る
施設ごとの基本情報には、医師、看護職員、介護職員などの人数や勤務形態が掲載されています。
パンフレットの「医療充実」という表現だけで判断せず、公表情報と施設からの説明を組み合わせて確認すると実態を把握しやすくなります。
数字だけでなく本人の医療ニーズと照合する
医師の人数が多いほど必ず本人に適しているとは限りません。本人が必要とする医療処置や専門診療、夜間対応が実際に可能かを確認することが重要です。
最終チェック
- 介護医療院の類型はⅠ型・Ⅱ型のどちらか
- 常勤医・非常勤医の実人数
- 日中の診療方法
- 夜間に宿直医がいるか
- 宿直医がいない場合の診察体制
- 本人の持病・医療処置への対応
- 協力医療機関との連携
- 救急搬送・看取り時の対応
まとめ|医師の「人数」だけでなく夜間・急変時の体制まで確認する
介護医療院には医師の配置基準があり、法令上はⅠ型入所者数÷48とⅡ型入所者数÷100を合計して常勤換算の必要数を求め、その結果が3未満なら原則3人以上として扱います。
ただし、医療機関併設型、19人以下の併設型小規模介護医療院、医師の宿直を置かないことが認められる場合などには例外があります。
また、介護医療院では医師の宿直が原則ですが、一定の条件を満たせば宿直医を置かない施設もあります。そのため、「医師が何人いるか」という数字だけで夜間の安心度を判断することはできません。
入所前には、常勤医・非常勤医の人数、日中の診療、夜間の宿直・連絡体制、本人の持病への対応、協力医療機関、急変時の搬送方針まで確認してください。