特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)は、どちらも介護保険施設ですが、入所する目的が大きく異なります。
特養は、日常的に介護が必要な人が長期的に生活する施設です。一方、老健は、リハビリテーションや介護、必要な医療を受けながら在宅復帰を目指す施設です。「どちらが安いか」「どちらが入りやすいか」だけではなく、本人がこれからどこで生活したいのかを基準に選ぶ必要があります。
まず結論|特養は「長期生活」、老健は「在宅復帰」が中心
特養と老健の最大の違いは施設の目的です。特養は原則として要介護3以上の人が長期的に生活するための施設です。老健は要介護1〜5の人を対象に、リハビリテーションなどを行いながら自宅などへの復帰を支援します。老健は一律に3か月で退所する制度ではありませんが、長期居住を第一目的とした施設ではありません。
特養と老健の違いを最初に整理
特養と老健は、いずれも介護保険法に基づく介護保険施設です。しかし、入所対象や施設の役割、退所を考えるタイミングに違いがあります。
01
特別養護老人ホーム(特養)
常に介護が必要な人が、食事、入浴、排せつなどの介護を受けながら生活する施設です。長期的な生活の場として利用されることが多く、施設で暮らし続けることを前提に検討しやすい施設です。
02
介護老人保健施設(老健)
病状が安定した要介護者に対し、医学的管理のもとで介護、看護、リハビリテーションなどを提供し、自宅などへの復帰を支援する施設です。
最大の違いは「何のために入所するか」
特養と老健を選ぶとき、最初に確認したいのは施設の目的です。この違いを理解せずに入所すると、「長く暮らしたかったのに退所後の生活を考える必要が出てきた」「リハビリを期待していたが目的が違った」といった行き違いにつながります。
特養は介護を受けながら長期的に暮らす施設
特養は、常時介護が必要な人に対して、入浴、排せつ、食事などの介護、日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話を提供します。
施設での生活そのものが中心になるため、自宅での介護が難しくなり、長期的な生活の場を探している人にとって有力な候補になります。
老健はリハビリなどを行い在宅復帰を支援する施設
老健は、入所者ができるだけ自立した日常生活を送れるよう、リハビリテーション、必要な医療、介護などを提供し、居宅での生活への復帰を目指します。
退院後すぐに自宅へ戻ることが難しい人が、生活機能を整えたり、家族やケアマネジャーなどと退所後の生活を調整したりする場として利用されることがあります。
POINT
「施設に長く住みたい」のか、「自宅などへ戻るための準備をしたい」のかで、特養と老健の選択は大きく変わります。
入所条件は特養と老健でどう違うのか
どちらも要介護者向けの施設ですが、対象となる要介護度は同じではありません。
特養への新規入所は原則として要介護3以上
特養へ新たに入所する人は、原則として要介護3〜5が対象です。要介護1・2の人は原則的な入所対象ではありません。
ただし、認知症によって在宅生活が難しい、家族による支援を期待できないなど、やむを得ない事情がある場合には、要介護1・2でも特例入所の対象になることがあります。
要介護1・2でも特養へ入所できる場合があります
「特養は要介護3以上しか入れない」と一律に考えるのは正確ではありません。在宅生活を続けることが著しく難しい事情がある場合は、特例入所に該当するか施設や市区町村へ確認します。
老健は要介護1〜5の人が対象
老健は、要介護1〜5の認定を受けた人が対象です。要支援1・2の人は入所できません。
要介護度だけでなく、本人の病状が安定しているか、施設で必要な介護・医療・リハビリテーションを提供できるか、在宅復帰に向けた支援が適しているかなども入所判定で確認されます。
入所期間の違い|特養は長期、老健は在宅復帰を見据える
検索時に特に混乱しやすいのが入所期間です。「特養はずっと住める」「老健は3か月で必ず退所」と単純に分けるのは正確ではありません。
特養には一律の入所期間が設定されていない
特養は長期生活を目的に利用しやすく、制度上「入所から○か月で退所」といった一律の期間は設定されていません。
ただし、入院が長期化した場合や、施設では対応できない医療が必要になった場合など、状況によっては退所や住み替えを検討することがあります。具体的な退所条件は施設の重要事項説明書などで確認します。
老健は一律に3か月で退所する制度ではない
老健では「3か月で必ず退所する」と説明されることがありますが、一律に3か月で退所しなければならない制度ではありません。
ただし、老健は在宅復帰・在宅療養支援を目的とする施設です。入所中は本人の状態や退所後の生活について継続的に検討されるため、長期的な居住そのものを第一目的として施設を探している場合には、特養など別の施設も比較する必要があります。
費用はどちらが安いのか
特養と老健はどちらも介護保険施設で、費用の基本的な構造は共通しています。施設サービス費の自己負担に、食費、居住費、日常生活費などを加えて支払います。
そのため、「特養なら必ず月○万円、老健なら必ず月○万円」と固定額で比較することはできません。
特養の費用
特養では、要介護度、居室の種類、施設の体制、各種加算などによって介護保険の自己負担額が変わります。さらに食費、居住費、日常生活費などがかかります。
従来型個室、多床室、ユニット型個室など居室の種類によって居住費が異なるため、料金を比較するときは本人が利用する居室タイプで見積もることが大切です。
老健の費用
老健も、施設サービス費、食費、居住費、日常生活費などが基本です。施設の類型、要介護度、居室の種類、リハビリテーションや在宅復帰支援に関する加算などによって実際の自己負担額が変わります。
老健は入所期間が本人の状態や在宅復帰の見通しによって変わるため、月額だけではなく、想定される入所期間と退所後に必要なサービスの費用も合わせて考えます。
特養・老健に共通して確認したい費用
- 介護保険の施設サービス費の自己負担
- 食費
- 居住費
- 日常生活費
- 理美容などの実費
- 施設ごとに算定される各種加算
所得が低い人は食費・居住費の軽減を受けられる場合がある
特養と老健はいずれも、一定の所得・資産要件を満たす人について、食費・居住費の負担を軽減する「特定入所者介護サービス費(補足給付)」の対象となる介護保険施設です。
対象になる場合は、市区町村へ申請して負担限度額認定を受けます。所得だけでなく、配偶者の課税状況や預貯金等の資産要件もあるため、住民税非課税だけで自動的に適用されるとは限りません。
費用比較では負担軽減後の金額も確認する
食費・居住費の負担限度額が適用されるかどうかで、実際の月額負担は変わります。特養と老健の料金表をそのまま並べるだけでは、本人の実際の負担を比較できない場合があります。
入所を検討するときは、本人の負担割合と負担限度額認定の対象になるかを確認したうえで、それぞれの施設から月額の見込み額を出してもらいます。
リハビリテーションの違い
リハビリテーションを重視する場合は、老健の役割を理解しておく必要があります。
老健は在宅復帰に向けたリハビリが制度上の中心
老健では、医師、看護職員、介護職員に加え、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職を配置し、在宅復帰に向けた支援を行います。
歩行や立ち上がりなどの身体機能だけでなく、自宅へ戻った後の生活を想定しながら支援を進めることが老健の特徴です。
特養でも機能訓練はあるが施設の主目的は異なる
特養でも機能訓練は行われますが、施設の中心的な役割は日常生活上の介護と長期的な生活支援です。
リハビリテーションを最優先して施設を探している場合は、専門職の配置、個別訓練の内容、頻度などを実際の施設ごとに確認します。
医療・看取りへの対応にも違いがある
特養と老健には看護職員が配置されていますが、医療提供体制は同じではありません。また、同じ施設種別でも対応できる医療処置や看取りの方針には差があります。
特養は長期生活を見据えて看取りを行う施設もある
特養の中には、本人や家族の意向を確認しながら看取り介護を行う施設があります。ただし、すべての特養が同じ体制で看取りや医療的ケアを行えるわけではありません。
持病がある場合は、看護職員の配置時間、協力医療機関、夜間の緊急対応、看取りの実施状況などを確認します。
老健は必要な医療を提供しながら在宅復帰を支える
老健には医師が配置され、医学的管理のもとで必要な医療やリハビリテーションを提供します。一方、病院のような急性期治療を行う施設ではありません。
継続している治療や医療処置がある場合は、その内容を施設へ伝え、入所中に対応できるかを事前に確認する必要があります。
特養と老健のどちらが向いているか
本人の要介護度だけではなく、「入所後にどのような生活を目指すのか」を基準に考えると選びやすくなります。
特養が候補になりやすい人
- 原則として要介護3以上で日常的な介護が必要
- 自宅での介護を続けることが難しい
- 長期的に生活できる施設を探している
- 介護を受けながら生活を安定させたい
老健が候補になりやすい人
- 要介護1〜5の認定を受けている
- 退院直後などで自宅生活への移行に準備が必要
- リハビリテーションを行い生活機能を整えたい
- 自宅などへの復帰を目標にしている
施設を選ぶ前に確認したい4つのポイント
特養か老健かという施設分類だけで判断せず、実際の候補施設について確認することが大切です。
01
入所の目的が本人の希望と合っているか
長期生活を希望しているのか、在宅復帰を目指しているのかを最初に整理します。老健へ入所する場合は、退所後にどこで生活する予定なのかも家族で考えておきます。
02
必要な介護・医療・リハビリに対応できるか
認知症、医療処置、夜間介護、リハビリテーションなど、本人に必要な支援を具体的に伝えて確認します。施設種別が同じでも対応範囲は異なります。
03
本人の条件で月額費用を見積もる
要介護度、自己負担割合、居室の種類、食費・居住費の負担軽減制度を反映し、実際の月額見込み額を出してもらいます。
料金表の標準額だけでは本人の負担を判断しにくいため、特養と老健の両方で同じ本人条件を伝えて比較することが大切です。
04
退所後の生活まで確認する
特養ではどのような場合に退所を検討するのか、老健では在宅復帰に向けてどのような支援を行うのかを確認します。入所することだけではなく、その後の生活まで考えることが施設選びでは重要です。
まとめ|長期生活なら特養、在宅復帰を目指すなら老健が基本
特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)は、どちらも介護保険施設ですが、役割は異なります。
特養は原則として要介護3以上の人が、介護を受けながら長期的に生活するための施設です。要介護1・2でも、一定の事情があれば特例入所の対象になる場合があります。
老健は要介護1〜5の人を対象に、リハビリテーションや介護、必要な医療を提供しながら在宅復帰を支援します。一律に3か月で退所する制度ではありませんが、長期居住を第一目的とする施設ではありません。
費用はどちらも施設サービス費、食費、居住費、実費などで構成されます。「長く暮らす場所を探しているのか」「自宅などへ戻るための支援が必要なのか」を先に決め、そのうえで本人の条件に合った費用と支援内容を比較することが大切です。