生活保護を受給している人でも、条件が合えば介護付き有料老人ホームへ入居できる場合があります。
ただし、「生活保護を受けていれば、どの介護付き有料老人ホームにも入れる」「ホームの料金がすべて生活保護でまかなわれる」わけではありません。
重要なのは、本人に必要な介護サービスが生活保護の介護扶助の対象になることと、家賃・食費・管理費などを含めたホーム全体の費用を、本人の収入や各種扶助の範囲で継続して支払えることの両方を確認することです。
まず結論|生活保護でも入居できる介護付き有料老人ホームはあるが、福祉事務所と施設の両方へ事前確認が必要
介護付き有料老人ホームで利用する「特定施設入居者生活介護」は、生活保護法の介護扶助の対象となる介護サービスに含まれます。生活保護では、介護サービス費は介護扶助、家賃等は住宅扶助、食費など日常生活に必要な費用は生活扶助など、それぞれ別の仕組みで扱われます。そのため、介護保険自己負担が介護扶助の対象になっても、ホームの家賃・管理費・食費・入居時費用などが高ければ入居が難しい場合があります。候補施設を決める前に、現在担当している福祉事務所・ケースワーカーへ相談し、その施設の料金で入居可能か確認することが重要です。
生活保護でも介護付き有料老人ホームに入居できる?
生活保護受給者であることだけを理由に、介護付き有料老人ホームへの入居が制度上すべて禁止されているわけではありません。
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームです。
生活保護法では、この特定施設入居者生活介護を介護扶助の対象となる「居宅介護」の一つとして位置づけています。
介護サービス費は介護扶助の対象になる
厚生労働省によると、生活保護の介護扶助は、介護保険の保険給付対象となる介護サービスを基本として給付します。
介護付き有料老人ホームで提供される特定施設入居者生活介護も対象に含まれます。
65歳以上の介護保険被保険者などの場合、介護保険で給付された後の本人負担分について、介護扶助が適用される仕組みです。
介護扶助は原則として現物給付
介護扶助は、原則として本人へ現金を渡して介護費を支払うのではなく、介護サービスそのものを給付する「現物給付」で行われます。
厚生労働省の生活保護制度案内でも、介護サービス費については介護扶助として、費用を直接介護事業者へ支払う仕組みが示されています。
「介護費が0円」=「ホームの月額料金が0円」ではない
介護扶助の対象は介護サービス費です。介護付き有料老人ホームの家賃、食費、管理費、日用品費などまで、すべて介護扶助で支払われるわけではありません。
生活保護で支払われる費用はどう分かれる?
生活保護には、生活上必要な費用ごとに複数の「扶助」があります。
介護付き有料老人ホームの費用を考えるときは、請求総額をひとまとめにせず、何の費用なのかを分けて確認する必要があります。
| 費用の種類 | 主に関係する扶助 |
|---|---|
| 介護保険サービス費 | 介護扶助 |
| 家賃等 | 住宅扶助 |
| 食費・日常生活費等 | 生活扶助など |
| 医療サービス費 | 医療扶助 |
住宅扶助は家賃等を定められた範囲内で支給
厚生労働省は、住宅扶助について、アパート等の家賃等を「定められた範囲内で実費を支給」としています。
介護付き有料老人ホームの場合、料金表に「家賃相当額」などの項目があります。
ただし、ホームの料金項目がそのまま全額住宅扶助として認められるとは限りません。どの費用がどの扶助として扱われるかは、担当する福祉事務所へ具体的な料金表を見せて確認することが必要です。
食費や日常生活費は介護扶助とは別
介護付き有料老人ホームでは、食費、日用品費、理美容費など、介護保険サービス費以外にもさまざまな費用がかかります。
これらは介護扶助とは別の扱いになります。
本人に支給される生活扶助や年金等の収入を含め、実際に毎月支払いを続けられるかを確認します。
POINT
施設へ「生活保護対応ですか」と聞くだけでは不十分です。「家賃はいくらか」「管理費はいくらか」「食費はいくらか」「介護保険以外に毎月何が必要か」と項目を分け、その料金表を福祉事務所へ確認してもらいましょう。
介護扶助では特定施設入居者生活介護を利用できる
生活保護法では、介護扶助の対象となる居宅介護の中に「特定施設入居者生活介護」が明記されています。
介護付き有料老人ホームは、この特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームです。
介護扶助の対象は介護保険給付と基本的に同じ
厚生労働省の「生活保護の介護扶助について」では、介護扶助の内容は、基本的に介護保険の保険給付対象サービスと同内容とされています。
そのため、本人の要介護度に応じた特定施設入居者生活介護の介護サービス費については、介護扶助の仕組みで対応します。
特別な居室などは介護扶助の対象とは限らない
一方、厚生労働省は、最低限度の生活にふさわしくないものとして、特別な居室等の提供は介護扶助の対象にならないとしています。
たとえば、標準的な居室より高額な特別室を本人の希望だけで選ぶ場合などは、生活保護で認められる費用の範囲と合わない可能性があります。
居室タイプを選ぶ前に、福祉事務所へ確認してください。
どの介護付き有料老人ホームでも入居できるわけではない
生活保護受給者が介護付き有料老人ホームを探す際、最大の課題になりやすいのが料金です。
家賃・管理費・食費が高いと入居が難しいことがある
介護保険自己負担を介護扶助でまかなえる場合でも、家賃相当額、管理費、食費などが本人の支払可能額を大きく超えていれば、入居を継続できません。
そのため、生活保護受給者を受け入れているホームでは、入居一時金を抑えたプランや、低額な料金設定を設けている場合があります。
ホーム側の入居条件もある
料金条件を満たしていても、本人の介護度や医療ニーズ、認知症の状態などによって施設側が受入可能か判断します。
生活保護の条件だけでなく、通常の入居審査も必要です。
「生活保護相談可」と「必ず入居できる」は違う
ホームが生活保護受給者の相談を受け付けていても、空室状況や本人の状態、料金条件、福祉事務所の確認などによって入居できない場合があります。
「生活保護可」という広告表示だけで決めず、個別の条件を確認してください。
入居一時金があるホームはどうする?
介護付き有料老人ホームには、入居時に前払金や敷金などが必要なホームがあります。
生活保護受給中の人にとって、高額な入居一時金が必要なプランは現実的に利用が難しいことがあります。
入居金0円の月払いプランを確認する
同じホームでも、「前払い方式」と「月払い方式」の両方を用意している場合があります。
生活保護での入居を検討する場合は、まず入居時費用が低いプランがあるか確認するとよいでしょう。
敷金など初期費用の扱いは福祉事務所へ確認する
入居時に敷金などが必要な場合、その費用をどのように準備するかは個別確認が必要です。
施設と契約する前に、金額・費目・返還条件が分かる書類を担当ケースワーカーへ提示して相談してください。
年金を受け取っている場合はどうなる?
生活保護を受給していても、年金収入がある人はいます。
生活保護制度では、年金などの収入を認定し、最低生活費に不足する分を保護費として支給する仕組みです。
年金と保護費を合わせて生活する
厚生労働省によると、生活保護費は、最低生活費と年金などの収入を比較し、その不足分を支給します。
そのため、「生活保護受給者だから年金を施設費とは別に自由に使える」という仕組みではありません。
実際にホームの費用へどのように充てるかは、本人の収入認定と保護費の計算を踏まえて福祉事務所が判断します。
医療費はどうなる?
介護付き有料老人ホームへ入居しても、病院や診療所での医療が必要になる場合があります。
生活保護では、必要な医療サービスの費用は医療扶助の対象になります。
介護扶助と医療扶助は別
介護付き有料老人ホームで受ける介護サービスは介護扶助、病院・診療所で受ける医療は医療扶助と、制度上は分けて扱います。
ホーム内で訪問診療や外部医療機関との連携がある場合も、生活保護受給中であることを事前に施設や医療機関へ伝えておく必要があります。
受診先については福祉事務所と施設へ確認する
生活保護の医療扶助では、指定医療機関での受診など制度上の手続きがあります。
入居後に利用する協力医療機関や訪問診療先について、生活保護の医療扶助で利用できるか確認してください。
今の自治体とは別の地域のホームへ入居できる?
生活保護受給中に、現在住んでいる自治体とは別の市区町村にある介護付き有料老人ホームを希望する場合もあります。
ただし、生活保護には実施機関や居住地に関する制度上の扱いがあるため、家族だけでホームと契約してから福祉事務所へ報告する進め方は避けた方が安全です。
県外・市外へ移る場合は先にケースワーカーへ相談する
現在の福祉事務所へ、希望施設の所在地、料金、入居理由を伝え、必要な手続きを確認します。
施設側にも生活保護受給中であることを伝え、福祉事務所との調整が必要であることを共有してください。
家族の近くへ移りたい場合も同じ
「家族の近くのホームへ移りたい」という理由でも、料金条件や保護の実施上の確認が必要です。
候補施設を数件に絞った段階でケースワーカーへ相談すると、契約直前の行き違いを防ぎやすくなります。
入居までの進め方
生活保護を受給しながら介護付き有料老人ホームへ入居する場合は、施設探しと福祉事務所への相談を並行して進めます。
01
担当ケースワーカーへ入居希望を相談する
介護付き有料老人ホームを検討している理由、現在の介護状況、希望地域などを伝えます。
02
生活保護受給者を相談可能なホームを探す
料金だけでなく、本人の介護度・医療ニーズに対応できる施設を候補にします。
03
詳細な料金表をもらう
家賃、管理費、食費、介護保険外費用、入居時費用を分けた資料を受け取ります。
04
福祉事務所へ料金表を確認してもらう
どの費用が扶助の対象になり、本人の収入・保護費で支払い可能か確認します。
05
施設の入居審査を受ける
介護度、医療情報、認知症の状態などを施設へ伝え、受入可能か判断してもらいます。
06
福祉事務所との確認後に契約する
生活保護上の費用確認を終え、施設の契約内容にも納得したうえで正式契約へ進みます。
施設へ確認したい費用項目
生活保護での入居では、「月額総額」だけでなく内訳が特に重要です。
施設からもらいたい料金情報
- 入居一時金・前払金はいくらか
- 敷金はいくらか
- 家賃相当額はいくらか
- 管理費はいくらか
- 食費はいくらか
- 水道光熱費は別料金か
- 介護保険自己負担はいくらか
- 毎月算定される主な加算は何か
- 医療費・薬代は別か
- 日用品費はいくら程度か
- 理美容費はいくらか
- 通院付き添い等に追加料金があるか
- オムツ代などで別料金になるものはあるか
- 月額以外に定期的に必要な費用はあるか
この料金表をそのまま担当ケースワーカーへ見せることで、具体的な相談がしやすくなります。
施設選びでは「生活保護可」以外に何を見る?
費用条件を満たすことは重要ですが、長期的に暮らす場所なので、料金だけで選ぶのは避けたいところです。
必要な介護に対応できるか
要介護度が高い場合は、食事、排せつ、移乗、入浴など、本人に必要な介護へ対応できるか確認します。
医療ニーズに対応できるか
インスリン、喀痰吸引、経管栄養、在宅酸素などが必要な場合は、処置名、回数、時間帯まで伝えて確認します。
将来も住み続けられるか
要介護度が上がった場合や、医療ニーズが増えた場合の継続入居条件も確認します。
入居時の費用だけ合わせても、数か月後に医療対応が難しくなって退去することになれば、本人に大きな負担がかかります。
生活保護受給中であることは施設へいつ伝える?
施設へは、入居相談の早い段階で生活保護受給中であることを伝えるのが現実的です。
見学後まで隠す必要はない
生活保護の場合、料金条件や福祉事務所との調整が必要になります。
契約直前に初めて伝えると、料金が合わない、必要な事務手続きが間に合わないといった問題が起きる可能性があります。
ケースワーカーの連絡先を共有する
本人・家族の同意のもとで、施設担当者とケースワーカーが料金や手続きについて直接確認できると、調整が進めやすくなる場合があります。
どの情報をどこまで共有するかは、本人の同意や個人情報の取扱いを確認したうえで進めます。
生活保護で入居するときに避けたい3つの進め方
1.先に施設と契約してしまう
料金が生活保護の範囲で認められるか確認する前に契約すると、後から支払いが難しいことが分かる可能性があります。
必ず福祉事務所へ事前相談してください。
2.介護費だけ見て判断する
介護扶助で介護保険サービス費がカバーされても、家賃・食費・管理費などは別です。
ホームへ実際に毎月支払う総額を確認する必要があります。
3.「生活保護可」という表示だけで決める
生活保護受給者の相談が可能でも、本人の医療・介護状態へ対応できるとは限りません。
料金条件と受入条件の両方を確認してください。
入居前に確認したい質問
生活保護で介護付き有料老人ホームへ入居する際のチェックリスト
- 生活保護受給中でも入居相談できますか
- 生活保護受給者向けの料金プランはありますか
- 入居一時金0円のプランはありますか
- 契約時に必要な初期費用はいくらですか
- 家賃相当額はいくらですか
- 管理費・食費はいくらですか
- 介護保険外で毎月必要な費用は何ですか
- 現在の要介護度で介護保険サービス費はいくらですか
- 生活保護の介護扶助による利用に対応できますか
- 現在必要な医療処置に対応できますか
- 福祉事務所・ケースワーカーと料金確認をしてもらえますか
- 要介護度が上がった場合も住み続けられますか
- 将来医療ニーズが増えた場合の退去条件は何ですか
- 料金が改定された場合はどのような対応になりますか
そして福祉事務所には、施設の料金表・重要事項説明書などを提示し、「このホームへ入居した場合、どの費用がどの扶助で扱われ、毎月の支払いを継続できるか」を確認してください。
まとめ|生活保護でも入居可能だが、介護扶助と施設費を分けて考える
生活保護を受給している人でも、条件が合えば介護付き有料老人ホームへ入居できる場合があります。
介護付き有料老人ホームで利用する特定施設入居者生活介護は、生活保護法の介護扶助の対象に含まれます。厚生労働省によると、介護扶助は基本的に介護保険の給付対象サービスと同じ内容で、原則として現物給付で行われます。
一方、介護付き有料老人ホームでは、介護サービス費のほかに家賃相当額、管理費、食費、日用品費などが必要です。これらすべてが介護扶助で支給されるわけではありません。
生活保護では、家賃等は住宅扶助、日常生活に必要な費用は生活扶助、医療は医療扶助など、それぞれ別の仕組みがあります。
候補施設を見つけたら契約前に詳細な料金表を受け取り、担当ケースワーカーへ確認してもらうことが最も重要です。
「生活保護可」という表示だけではなく、本人の介護・医療ニーズに対応できるか、初期費用と毎月の費用を継続して支払えるか、将来状態が変わっても暮らし続けられるかまで確認して施設を選びましょう。

