デイサービス(通所介護)では、食事や入浴、送迎などに加えて、利用者の生活機能を維持・向上するための機能訓練が行われることがあります。その中でも「個別機能訓練」は、利用者一人ひとりの心身の状態や自宅での生活状況、本人の希望を踏まえて目標と内容を決め、計画的に行う訓練です。
「筋力をつけるための運動」と考えられがちですが、目的は運動能力だけを高めることではありません。自宅で立ち上がる、トイレへ移動する、着替える、買い物に出かけるなど、その人が実際の生活で続けたい動作や活動につなげることが重要です。
まず結論|個別機能訓練は「生活を続けるため」の訓練
デイサービスの個別機能訓練は、一律の運動メニューをこなすものではありません。本人の身体機能と自宅での生活状況を確認し、「自分で立ち上がりたい」「トイレまで歩きたい」「家事を続けたい」などの具体的な生活目標を設定して、その達成に必要な訓練を計画的に行います。
デイサービスの個別機能訓練とは
個別機能訓練とは、利用者ごとに作成した個別機能訓練計画に基づき、身体機能や生活機能の維持・向上を目指して行う訓練です。介護保険の通所介護では、一定の人員配置や計画作成、実施、評価などの要件を満たした事業所が「個別機能訓練加算」を算定する仕組みがあります。
計画は機能訓練指導員だけで決めるものではなく、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員などが利用者の状態や生活上の課題を共有しながら作成します。加算の要件では、自宅を訪問して居宅での生活状況を確認し、その情報を計画に反映することも求められています。
「個別」とはマンツーマンだけを意味しない
名称に「個別」とありますが、必ずしも訓練の時間すべてを職員と1対1で行うという意味ではありません。個別機能訓練加算では、利用者ごとの目標と計画を作成したうえで、個別または5人程度以下の小集団で訓練を行う場合があります。
大切なのは、全員に同じ体操を提供することではなく、その人の生活課題に合った目標と訓練内容が設定されているかどうかです。
個別機能訓練の目的は身体機能だけでなく生活機能を支えること
個別機能訓練の目的は、単に筋力や関節の動きを改善することではありません。残っている能力を生かしながら、日常生活で必要な動作や社会参加を維持・向上することにあります。
たとえば「脚の筋力をつける」という目標だけでは、本人の生活との関係が分かりにくくなります。「自宅のトイレまで安全に歩く」「玄関の段差を越えて外出する」「自分で椅子から立ち上がる」といった生活場面まで落とし込むことで、何のために訓練するのかが明確になります。
POINT
良い個別機能訓練かどうかを見るときは、「どんな運動をしているか」だけでなく、「その訓練が本人のどの生活動作につながっているか」を確認します。
個別機能訓練ではどのようなことを行うのか
訓練内容は利用者の状態や目標によって異なります。歩行練習や立ち上がり練習だけでなく、自宅で実際に必要になる動作を想定した練習が組み込まれることもあります。
01
立ち上がり・移乗・歩行などの基本動作
椅子から立つ、ベッドから車いすへ移る、屋内を歩くといった基本動作は、日常生活の自立度に大きく関わります。本人の筋力やバランス、痛み、転倒歴などを確認しながら、安全性に配慮して練習します。
02
トイレ・着替え・入浴などの日常生活動作
本人が自宅で困っている動作に合わせ、トイレまでの移動、便座からの立ち上がり、衣服の着脱、浴室への出入りなどを想定した訓練を行うことがあります。単独の筋力訓練よりも、実際の生活場面に近い動作を練習することで、在宅生活での目標につなげます。
個別機能訓練の対象になる人
個別機能訓練加算は、通所介護を利用する人のうち、事業所が本人の心身状態や生活状況を確認し、個別機能訓練計画を作成して訓練を実施する場合に算定されます。デイサービスを利用していれば自動的に全員が同じ個別機能訓練を受けるわけではありません。
たとえば、歩く力が低下してきた人、立ち上がりや移乗に不安がある人、退院後に自宅での生活動作を保ちたい人、家事や外出を続けたい人などは、個別機能訓練を検討する場面があります。ただし、実施の可否や内容は本人の状態、希望、事業所の人員体制などによって異なります。
個別機能訓練を相談してみたいケース
- 以前より歩く距離が短くなった
- 椅子やトイレからの立ち上がりが難しくなった
- 転倒が心配で外出を控えるようになった
- 退院後の生活動作をできるだけ維持したい
- 家事や趣味など本人が続けたい活動がある
個別機能訓練は誰が担当するのか
個別機能訓練加算の機能訓練指導員として位置づけられるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などです。一定の要件を満たしたはり師・きゅう師が対象になる場合もあります。
「機能訓練指導員」という名称の単独資格があるわけではありません。また、事業所によって配置されている専門職や得意とする訓練内容は異なります。理学療法士や作業療法士が常にいるとは限らないため、専門職の種類を重視する場合は利用前に確認しておくとよいでしょう。
医療機関のリハビリと同じではありません
デイサービスの個別機能訓練は、介護保険の通所介護の中で生活機能の維持・向上を支えるものです。医師の指示のもとで医学的なリハビリテーションを行う通所リハビリテーション(デイケア)とは、サービスの位置づけや人員体制が異なります。
個別機能訓練の計画はどのように見直されるのか
個別機能訓練は、一度計画を作って同じ内容を続けるものではありません。現在の基準では、居宅での生活状況を確認したうえで計画を作成し、その後も少なくとも3か月に1回、居宅での生活状況を確認し、計画の進捗を評価して本人や家族へ説明することが求められています。
歩ける距離が伸びた、反対に体力が低下した、住環境が変わったなど、状況が変化すれば目標や訓練内容も見直す必要があります。利用者本人が目標をどう感じているかも重要です。
デイサービス選びでは個別機能訓練の「内容」を確認する
「個別機能訓練あり」と表示されているだけでは、実際にどのような支援を受けられるかまでは分かりません。事業所によって専門職の配置、設備、訓練の内容、実施日などが異なるため、見学や利用相談の際に具体的に確認します。
01
本人の生活目標まで聞いてくれるか
「歩行訓練をします」という説明だけでなく、自宅で何に困っているのか、今後どのような生活を続けたいのかまで確認してくれるかを見ます。本人の希望が計画に反映されることが大切です。
02
誰が、いつ訓練を担当するのか
機能訓練指導員としてどの職種が配置されているか、利用予定日に訓練を受けられるかを確認します。特定の専門職による支援を希望する場合は、その職種が実際に担当するのかも聞いておきます。
03
訓練の結果をどう評価し、家族へ説明するのか
個別機能訓練は実施するだけでなく、目標に対してどこまで進んだかを評価し、必要に応じて計画を見直します。本人や家族に経過をどのように説明しているかを確認すると、支援の考え方が分かりやすくなります。
まとめ|個別機能訓練は本人の生活目標から考える
デイサービスの個別機能訓練は、利用者ごとの心身状態と自宅での生活状況を踏まえて計画し、身体機能や生活機能の維持・向上を目指すものです。歩行や立ち上がりなどの運動そのものが目的ではなく、その先にある「自宅でどう暮らしたいか」を支えることが重要です。
デイサービスを比較するときは、機能訓練の有無だけではなく、本人の生活目標をどのように計画へ反映し、誰が訓練を担当し、結果をどう評価しているかまで確認してください。

